第6章 revenge4
黒川イザナの命令で私たちを拉致しに来たと話す。
大寿さんが八戒の無念を晴らしてくれと、私たちを逃がしてくれる。
大寿さんにお礼を告げて逃げようとした。
「きゃっ!?」
「星那ちゃん!?」
「タケミチくん、私のことはいいから、早く行って!!」
イヌピーさんに捕まり、逃げることが出来ない。
この人はどうして、私を・・・?
過去でもそうだった。
後ろから腹に手を回されて、身動きが取れない。
大寿さんが下っ端を殴り潰していく。
タケミチくんたちの去って行く後ろ姿を見て、少しの安堵をつく。
離してと言って暴れるが、全然振り解けない。
「少しはオレを見ろ。あの日からずっと好きだったんだ。」
え?・・・なにを言ってるの?
あの日って、いつ?
初めて会った時から、イヌピーさんは私を知ってた。
ずっとオマエがマイキーを好きなのは知ってた、でも忘れることが出来ないと、ぎゅうと大事そうに抱き締められる。
そんなイヌピーさんの本気が伝わってきて、彼のことをちゃんと思い出して答えないと、と思う。
でも・・・何も思い出せない。
「私たちは、いつ出会ったの?」
抵抗をやめて、穏やかに聞く。
「オマエが9歳の時だ。」
私が9歳ということは、彼は11歳?
そんな前から私のことを?
ココさんと喧嘩をした後、傷だらけで公園で不貞腐れていた彼を私が見付けて、手当てをして私が言ったそうだ・・・曲げられないものの為に身体を張れるのはかっこいいよね、イヌピーくん、かっこいいよと・・・。
そういえば、そんなことあったっけ・・・?
あの時の男の子は顔に火傷なんてなかった・・・だから気付けなかったの・・・?
「イヌピーくん、ごめんね・・・万次郎が死んじゃっても、私には万次郎だけだから・・・だから、イヌピーくんの気持ちには応えられない。」
少しだけと言って、私を大切に抱えて、首元に顔を埋める。
消えてしまいそうな程儚い、彼の手を取ることは出来ない。
大切に想ってくれてありがとうと伝えると、首筋に温かいものが溢れた。
過去のイヌピーくんにも伝えなきゃいけない。
タケミチくんたちは大丈夫だろうか。