第5章 revenge3.5
タケミチくんが涙を流しながら、何度も彼の名前を呼ぶ。
万次郎が目を開けて、タケミチくんにはムリだったからありがとうと直人くんに言った。
「やっと、終わるんだね・・・オレの人生は、苦しみだけだった。」
涙を溜める彼が、このままいなくなってしまうなんて・・・嫌だ。
タケミチくんがオレは過去に戻れる、こんな未来になんないように頑張るから、諦めないから、そんな悲しいこと言わないでと、涙を流して必死に喋る。
「私、さっき、一緒に死ぬって約束したけど・・・やっぱ出来ないっ、私もタケミチくんがいれば過去に戻れるのっ、だから、必ず助けるからっ・・・待っていて・・・。」
動かすのなんて大変なはずなのに、彼は私の頭に手を置いてくれる。
「ありがとう、タケミっち、星那・・・オレを慰めてくれるんだな。嘘でも嬉しいよ。」
絶対に助ける、絶対にもう諦めない。
何度、そう誓っただろう。
なのに結局、こんな未来になってしまった。
「タケミっち、オマエの手と、星那の涙・・・あったかい。」
そう言って微笑んだ彼の目には、光が差していた。
「星那、オマエは死ななくていい。死ぬのはオレ、1人でいい・・・死んでも、愛してる・・・。」
何にも喋らなくなり、私たちが何度呼びかけても、返事をしない。
タケミチくんが彼をぎゅっと抱き締めたので、私の顔が間に入って苦しい。
すごく、キツく抱き締める。
どうして・・・私は、彼を叱ってでも止めると約束したのに、なんでこんなことに・・・。
もう絶対、失敗出来ない。
私たちは絶対諦めちゃいけないんだ。
何度、失敗しても・・・何度、大切な人が死んでも・・・彼らが助かる未来まで、立ち止まれない。
私たちに与えられた力・・・私たちにしか出来ないことだから。
タケミチくんが力を緩めて少し離れたので、私も顔を上げて、冷たくなっていく彼に、そっとキスをした。
愛してると囁いて・・・。
そしてタケミチくんがまたぎゅっと彼を抱き締めて、強い目を私に向けた。
私も彼の手を握り締めて、決意をして、タケミチくんの目を見つめた。
もう一度、過去に戻る。
こんな未来にしないと、心で誓い合って・・・。