第3章 revenge2.5
稀咲は驚いたように声をあげる。
「姫はどうしたんですか?いつも、一言も喋らないのに・・・。」
「稀咲、出て行け・・・昔から星那は、オマエを嫌ってる。」
彼のその言葉に、稀咲は頭を下げて、部屋を出て言った。
それを見届けて彼はまた、私を抱き締める。
オレはもうオマエしかいらないと言って・・・。
彼が震えている、肩に温かい雫が零れて、流れていく。
私しかいらないんじゃないよ・・・違うよ、私しかいなくなってしまったんだよ。
これからどうすればいい・・・?
タケミチくんがどこにいるかわからない。
私はたぶん、ここから出られない。
彼はみんなを殺してしまった。
場地さんも、もう救えない。
もう私は、彼と堕ちていくしかないのかもしれない。
私は結局、何も変えられなかった。
最初から私は、なんの力もなかったんだ。
「万次郎・・・私ね、過去に行って、未来を変えてたの。ヒナと貴方を救う為に・・・でももうムリみたい、ごめんね。」
「なに言ってんだ?」
「20年間愛した貴方を、救えなかったっ・・・。」
私も彼にしがみつき、涙を流した。
胸が張り裂けそうなくらい、苦しい。
息をしようとしても、上手く出来なくて、少しずつしか吸えなくて・・・あ、あ、とか細い声を発することしか出来ない。
もしそれが本当なら、オレはこう言葉をかけると、そう前置きして、彼が喋り出す。
「諦めないで、オレを助けてくれ。オレはみんなと一緒にいたい・・・普通の暮らしをして、みんなと笑い合っていたい、オマエを普通に愛したい・・・もう一度、過去に行ってくれ、オレを救えるのは、オマエしかいない、と・・・。」
その言葉を聞いて、少しずつ息が出来るようになり、身体を少し離して、見つめ合った。
ここで挫けちゃダメだ、救うと決めたんだ。
最高の未来を作らないと・・・。
その時、ドクンと沈むような感覚に陥る。
この感じは・・・。
「星那・・・?」
「万次郎、貴方を救ってくる。」
精一杯の笑顔で笑うと、彼は嬉しそうに笑った。