第3章 revenge2.5
両親が生きている未来に辿り着いたんだ、もう彼に殺させたくない。
「なんでも言うこと聞くから、お願いっ、殺さないで・・・!!」
彼は私の身体を眺めて、ソファーに置いてあった毛布を背中に掛けた。
その毛布の前を手で押さえて、彼に寄り、膝に肘を付いた腕の中に潜り込んで、胸に顔を埋める。
「なんでも言うこと聞くんなら、オレの側にいて、オレを抑えてくれ。昔、約束したよな。」
「っ!?・・・あたりまえだよ、私は貴方を殴ってでも止める。」
彼は、昔の自分を失っちゃいない。
でも、今の彼だとダメだ。
きっと、罪をたくさん犯している。
戻らなきゃ・・・過去に戻って、彼を救わなきゃ。
彼が、暗闇で膝を抱えて、泣いている。
「オレが好きか?オレを見捨てねぇか?」
「好きだよっ、見捨てないよっ・・・!!」
おでこをくっつけて目を見つめると、彼はゆっくりと一筋だけ涙を流した。
その涙は、私が拭うよ。
親指で優しく拭う。
彼は私を離して、両親を見た。
「何を知っている。」
「ほとんど何も知らないわ。私たちは、娘の安否を知りたくて、東京卍會の捜査一課に志願した。」
彼は母のその言葉を信じ、刑事を辞めるよう言って、2人を解放した。
娘を殺したら、私がオマエを殺してやるという、母の言葉に彼が答える。
「オレが星那を、殺せる訳ない。」
男たちも追い出して、私たち2人だけになった。
ありがとうと言いながら、彼の太腿に顔を擦り寄せる。
すると彼は私を抱えて、膝の上に乗せた。
縋るように私の胸に顔を擦り付け、腕の下から通した手で肩を掴み、腰に回した手できつく抱き締められる。
「オマエはもう、オレのことを好きじゃないと思ってた。ずっとオマエを、薬と恐怖で縛り続けてきた。オレから離れないように・・・。」
彼も私に依存するように、愛し続けてくれたんだ。
狂おしい程、愛してくれたんだ。
私の20年間と同じように、彼も12年間、私を想い続けてくれた。
ただ、そのことが嬉しくて・・・こんな未来でもいいと思ってしまう。
でも、それじゃあ、彼を救えない。
ヒナもきっと、死んだままだ。
タケミチくんは今、どうしてるだろう・・・。