第2章 『 無敵ベイベー 』✱三ツ谷/裏有/幼なじみ
私の好きな人は、幼なじみで、優しくて人一倍周りのこと気遣って、不良だけど守るために力を使うって宣言できるくらいカッコイイ男の子だ。
「んね、三ツ谷くん最近よくない?」
(そして人気上昇中···。)
「わかるー、なんか他の男子と違って大人な感じ」
「妹の面倒見てるらしいよ」
「えっ、健気すぎない?かわいいんだけど」
きゃっきゃっと楽しそうな声が女子トイレから聞こえ、話題に花を咲かせ繰り広げられている中私は何となく扉から出られずに居た。
(わたしだって、タカちゃんのこと好きなのに)
女子達の声が遠のいてから外に出て、鏡を見つめる。
確かにタカちゃんは中学に入ってから群を抜いて格好よくなった。
背も伸びたし大人の色気が出てると思う。何にしても頼り甲斐のある男の子だ。タカちゃんが人知れず苦労して、頑張っていることも知っていたし、いつも応援してきたつもりだ。
そのタカちゃんが人気なのだ、それは嬉しいはずなのに···。
中学に入ってからタカちゃんと下校する頻度は減り、いつも一緒だったハズのタカちゃんが居ないだけで私は寂しくて仕方なかった。
(···あたまいたくなってきた···)
トイレから出た廊下の途中帰る方向を間違え踵を返した途端、私の視界は暗転した。
少し離れた場所でカタカタカタ···と機械音がする。
「···ん···」
目を開けると白い天井に白いカーテン、薬品の匂いがした。
(保健室···か···)
「おはよ」
カーテンから覗くのはタカちゃんの笑顔。
私を心配してわざわざミシンを保健室に持参してくれたのだと気づく。
「久々に一緒に帰るか!」
「···うん」
タカちゃんと手を繋いで歩く。
これは子供の頃からずっと変わらない。
昔とは違う、少し角張った彼の手に包まれて緊張して歩く。
枯葉が絨毯のようになり、秋空が赤く染まる今日はとても肌寒い。
ぱりぱりと枯葉を踏む音が響き、タカちゃんの冷たい指先が少しずつ暖かくなるのを感じた。
「この前の···」
先に沈黙を破ったのはタカちゃんだった。
「ん?」
「この前の告白の返事、どーなったよ」
「···断ったよ?」
「そか」
よりぎゅっと右手が握られ、ふわりと笑うタカちゃん。
タカちゃんがどう思ってるかわからないけれど、
私はタカちゃんが大好きなの。