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あたらよ【東リベ/短編集/裏有】

第2章 『 無敵ベイベー 』✱三ツ谷/裏有/幼なじみ


誰もいない教室が好きだ、オマエが居るから。

「タカちゃーーんっ!!」
放課後、手芸部へ向かうべく身支度を整えていたオレ目掛けて廊下から勢い良く教室へ走り込んで来たコイツはオレの幼なじみの名前。
現学級委員長サマだ。

「おぅ、どした名前」
つか委員長が走んなよ···と軽く諭して幼なじみのコイツの話に耳を傾ける。
当の本人はもごもごと口を濁らせ、顔を赤く火照らせながら言った。

「私、先輩に告白されちゃった!」
「は?」

聞けば先程まで3年の先輩に呼び出されて告白されたそうだ。
どうしよう、とやや嬉しそうにオレに話しかける名前。

「オマエ、その先輩の事好きなの?」
「うーん、好きじゃない」
「じゃあ断ればいいじゃん」

名前は目を見開き、腑に落ちないと言った様子でうーん、と小声で唸る。

「じゃ、オレ手芸部行くから」
「···ん、行ってらっしゃいタカちゃん」

先程までの元気はどこへいったのか力無く手を振る彼女を残してオレは教室を去った。

手芸が、デザインする事が、作ることが楽しい。
オレは部長だし皆の世話も任されている、人に頼られるのは満更でもなく心地が良かった。

手芸部への扉を開こうとしている時ふとアイツの元気の無さが気になって教室へ引き返した。

既に教室は空になっており、名前も帰ったのだとどこか自分に言い訳をしてオレは再び手芸部へ赴いた。

その日は最悪だった。
布地を取り、糸を取り、型紙を取るも
「部長!縫い合わせ逆です!」
「部長!その糸の色違います!」
「部長!型紙ごと縫ってます!」

部員たちに口を揃えて叱れられた。

見兼ねた安田さんに「部長、体調悪いならもう帰ってください!」とオレは手芸部を勢い良く追い出されたのだった。

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