第1章 『 camel 』✱佐野万次郎/裏有/大人/軽くドラエマ
名前は驚き引き剥がそうとしたが
男の左手によって自身の両腕を窓ガラスに縫い付けられうまく身動きが取れない。深い闇の色をした切れ長の瞳を持つ男になすがままにされていた。
「ぁふ、···ん···っ」
次第に舌が侵入し、名前の口内を貪る。
名も知らないこの人から自分が吸っていた銘柄と同じ煙草の匂いがしてくらくらとした。まるで頭の中まで弄られているような色気に絆されどれだけの時間こうして求め合っているか分からない。
1つに束ねていたはずの髪は男の手によって解かれ
ワイシャツは託しあげられ素肌を触られていた。
幸い社内に残っていたのは私だけで同僚は来ないだろうという安堵とは裏腹に万が一こんな姿を誰かに見られたらと募る不安が名前の羞恥心を煽っていた。
「んっ…」
長い口付けが終わり髪を撫でられた。
「髪おろした方がイイな」
首元に龍の刺青を入れた、艶やかな彼はニヒルに笑った。名前はギロリと睨み、威嚇した。
「···キミ、誰。」
「···佐野万次郎、ここのシャチョーだけど」
「は?」
社長······?社員が誰一人としてお目にかかった事がないと噂の若社長。
メディアにも一切露出せず、その正体は謎に包まれており社員ながらこの会社の行末を心配したものだ。
いやそもそも本当にいきなり襲ってくるような人が社長本人なのか?
戸惑いを隠せない名前をソファに押し倒しながら「オマエ気に入った。」と万次郎は笑った。
「何やってんですか、シャチョー」
「オマエだってあんなに舌絡めてきたくせに」
「それは不可抗力ってもん·····んぁっ」
名前の細い首筋に舌を這わせ、鎖骨に咬みつかれた。
首筋へ口付けに戻ってきたかと思えばチリリとした痛みが走り翌日も跡が残る事を悟った。この自称社長男、わざわざ見える場所につけやがった。
一箇所じゃ飽き足りず、耳も甘噛みされる。
ワイシャツと共に下着も捲し上げられ顕になった乳房をころころと細長い指先で遊ばれ始めた。
「っん、やっ···や、だ···!」
与えられた快感に声が抑えられず思わず女になってしまいそうになる。
残り少ない理性を振り絞り、抵抗の色をみせるも
体はどんどんこの男に支配されていく。
「うるせえ。オレに喰われろ」
耳元で囁かれたかと思えば
また煙草の匂いが降ってきた。