第1章 R h p l ss
小学生に大人気の駄菓子屋の前で幼い私は年上の男子に囲まれ、今し方出たアイスの当たりくじを横取りされまいと必死に守っていた。
髪を捕まれ体を揺すられながらも
これは、たかちゃんにあげるのだとそう言い張って。
「オマエら、退けよ」
私に群がる群れを一蹴りで散らし
どこか気だるそうに見えたその男の子こそが
佐野万次郎、通称マイキーくんだった。
「オマエ、名前は?」
「名前・・・苗字名前・・・」
「俺は佐野万次郎。マイキーって呼べよ!
オマエ、あんな大人数に囲まれてたのにかっけーな!名前、今日から俺のダチな!」
シシと笑うマイキーくんを見て
今まで張り詰めていた緊張の糸が切れ涙がぽたぽたと流れた
「ヨシヨシ、怖かったな」
マイキーくんに抱きしめられぽんぽんと頭を撫でられた私は安堵し、余計に大泣きしたのだった。
翌朝、登校途中に幼なじみのたかちゃんに会った。
昨日起きたことやマイキーくんという少年に助けられたことを目を輝かせ語るとに怒られた。
「あのな、名前・・・」
じとりとたかちゃんに睨まれ、たかがアイスの当たりくじくらいでもっと危ない目にあってたらマイキーが来なかったらとそれはそれは長々と怒られた。
でも怒ってくれるたかちゃんは優しい。
真剣な眼差しで私を叱るたかちゃんを見て嬉しくて自ずと笑みが零れた。
「ヒトが怒ってんのに、何笑ってんだよ」
「えへへ」
益々不機嫌そうなたかちゃんをよそに名前ははにかんだ。
わたしにとってたかちゃんと過ごすその時間が
何よりも大切で、大好きな時間だった。
それに明日から待ちに待った夏休み。
今年も来年もずーっとたくさんたくさん、たかちゃんと過ごすのだ。
そう夢見ながらたかちゃんの隣を歩いた。
名前の引っ越しが決まったのはその日の夜だった。