第59章 【第五十八訓】自称・雨女とか言うけど天気操る能力持ってない話
軒先から見上げる江戸の空は秋晴れだ。
もうじき日が沈む時刻だが、雨が続いた夕刻と違い、さわやかさを感じる。
結野と巳厘野は、力を合わせて闇天丸を封じた。
一千年に渡りいがみ合っていた両者の関係は、大きく変わろうとしている。
「日が暮れる前に、けーるぞ」
振り返ると、寝ていたはずの銀時が立っていた。
「もう起きて大丈夫なの?」
「すっかり元通りだ。見るか?」
「見るか、この変態」
先程まで、銀時はタマを元に戻す治療を受けていた。
外道丸に無残にも潰されたが、晴明の術はそれを完治させた。
「早ェとこ帰んねーとな」
銀時は徐々に闇に染まる空を眺める。
二人は岐路に着いた。
「……怒ってんのか?」
二人は無言で歩いていた。
沈黙に耐えられなくなった銀時は口を開く。
「え? 何が?」
○○は銀時を見上げる。
「何がって……」
○○をこの一件に関わらせないようにしようとしたこと、晴明を義兄と呼び、結野家への婿入りを画策し、結野アナの元旦那に強い怨嗟を向けたこと。などなど。
「何を今さら」
何を訴えた所で変わらない。結野アナは銀時の憧れ。○○が蔑ろにされることも無理はない。
「タマが潰されて溜飲は下がったし。あまりに度が過ぎてたら、私がタマ潰してやってたし」
不満が爆発した時は、その身をもって罰を受けてもらう。そんな関係でちょうどいい。
薄ら笑いを浮かべる○○に対し、銀時には仏頂面が浮かべた後、溜め息を吐いた。
「それに――」
夕闇の中が眩く光り、○○は口を閉ざした。
二人の行く道が手持ち提灯により、照らされている。
並んでいるのは、巨体の鬼達――式神だ。
こっそりと帰るつもりだったが、道満と晴明に悟られ、銀時と○○、それから合流した新八と神楽は盛大な見送りを受けた。
「こんだけ明るけりゃ、日が暮れてからでも帰れそうだな」
銀時の言葉に、○○は笑みを浮かべる。
それに、わかっている。大切に思ってくれていることは、わかっている。