第43章 【第四十二訓】沖田姉弟と気にくわねェ野郎の話 其ノ二

「○○」

　背後から聞こえた近藤の声に、○○は振り返る。
　そこには近藤と沖田、さらには山崎や原田など隊士たちが集っていた。

「総悟」

　最期の刻に沖田は間に合った。
　沖田に気づいた医者は彼を治療室の中へと誘った。
　○○の横を通り、沖田はミツバの元へと向かった。

　沖田の姿を見送ると、○○は再び隊士たちへと目を向けた。
　その中から一人の姿を捜すが、見つけだすことは出来なかった。

「近藤さん」

　○○は口を開いた。
　けれど、その先がどうしても口に出せなかった。

　――トシは？

　○○の言いたいことを汲み取った近藤は口元を小さく緩めた。

「いるさ。ここに」

　近藤は治療室の二人の姿に目を向けた。
　ミツバが穏やかな表情で沖田に語りかけている様子が見える。
　姿を現さなくとも心は確かに通っている。○○の知らない四人の絆。

　程なくして、ミツバは息を引き取った。

　近藤と沖田を残し、隊士たちは屯所へと引き上げた。
　○○は椅子に腰かけた。
　近藤はガラス越しに沖田を見守っている。

「○○」

　○○が顔を上げると、銀時が立っていた。

「銀さん……」

　彼は一度ガラス越しにミツバの姿に目を向けた。
　そこではすでに看護師たちがミツバの亡骸に死後の処置を施している。
　銀時は隣に腰を下ろすと、○○の頭を引き寄せて肩へと乗せた。