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3月9日  【A3】

第23章 萬里香


 「どう言う意味?」
 「私は、至さんのことそんなふうに純粋に想ってた訳じゃない。
 この話はこれでお終いね。
 そろそろ帰らないと、補導されちゃうよ」
 「芽李が送ってくれれば問題ない」
 「名案。良いこと言うじゃん、真澄」
 「無理。車ないから」
 「あら、配達用の使って良いわよ」
 「いいんすか??」
 「おばあちゃん!」

 強引さと、おばあちゃんのいらない気遣いに頭痛がしてくる。

 「ねぇ、芽李ちゃん、みんなに言わないで出て来たんじゃないの?」
 「それは」
 「帰らなくても良い、でもちゃんとお別れして来なさい」
 「…」
 「こうやって迎えに来てくれる良い子たちがいるのに、芽李ちゃんが大好きで来てくれるのに、それを無視するほど、無視できるほど酷い子じゃないでしょう?」
 「…っ、」
 「ね、芽李ちゃん」
 「わかった。でも、もうここに来ないって約束してくれるなら、送ってく。万里くんも」
 「は?来て良いって言ったじゃん」
 「無理やり連れて行こうとしてるんだから、それくらい飲んで。
 あと、寮の中には入らない、絶対。
 送るって言っても、寮の裏まで。
 みんなには会わない」
 「芽李ちゃん」
 「ケジメなんです、だから、…2人のことは心配だし、まだ学生なので、だから送ってくけど、もう私の中でお別れは済んでるんです。車、お借りします。行くよ、2人とも」
 「待ってちょうだい、真澄くんにスパイス渡してないわ」
 「…車、表に回して来ます」

ーーー


 「ごめんなさいね、2人とも。せっかく来てくれたのに。お手伝い助かったわ」
 「いえ、俺らこそ押しかけてすみません。…なんで伝わんねぇかな、あの頑固」
 「さすが咲也の姉だなって思った」
 「ふふ、でも、芽李ちゃんも、貴方達のこと嫌いになって拒んでるんじゃないんだと思うの」
 「わかってる。だってアイツは俺たちの1番のファンで、俺たちのこと大好きだってずっと言ってたから。
 そんなすぐ嫌いになると思えない」
 「心配なかったわね。はい、真澄ちゃん、これ」
 「ばあちゃんありがとう。また来てもいい?芽李関係なく」
 「もちろん」

  別に車で帰るなら急ぐ必要もないのに、気まずくて階段を駆け降りた。そんな会話されているとはつゆとしらずに。
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