第20章 白雪
朝目が覚めた時私はベッドの上にいて、覚醒しない頭ではその状況がよく分からなかった。
…でも、私の部屋であることだけはわかった。
視線を動かした時、カーテンの隙間から溢れた朝日に反射したのは、ミルクティーブラウン。
綺麗だなって思うのと同時に、ベッドにもたれるように眠っている至さんに、なぜこんなとこで寝ているのかと思った。
起こして聞こうか、そっと肩に手を伸ばして触れようとした時、思い出したのは昨日の冷たい視線。
慌てて手を引っ込めた。
あと私なんて言ったっけ?
…好きって言ったんだ。
カァッと顔に熱が集まるのを感じる。
耳まであつい。
言葉にしただけで、こんなふうになるってある?
思えば、今までだって結構甘い時間はあったはずなのに、今更だ。
どうしよう、なんだか、無性に落ち着かない。
なんて、あんな顔向けられといて、勝手に照れて馬鹿みたいだ。
ジェットコースターみたいに急降下した気持ちを、隠すようにして、引っ込めた手を改めて伸ばし、至さんの肩を恐る恐る摩る。
「…ん」
起きるかなって思ったのに、声を少し洩らすだけで伏せられた瞼が開くことはなかった。
寝てると幼い顔してるんだな…。
長いまつ毛、本当に整った顔をしてる。
ぴぴっ
突然なった音にビクッと肩を揺らす。
どうやら、目覚ましより前に起きてしまっていたらしい。
慌てて止めた後至さんを見れば、何事もなかったかのようにまだ眠っている。
…どうするべきか。
まだ朝は、早いし…。
ラグマットが敷いてあるとはいえ、床に寝るのは体が痛くなりそうだし…。
私じゃお姫様抱っこでお布団に寝かせるのも難しいだろう。
かと言って、起こすのもかわいそうだ。
仕事まで寝ていたいだろうから。
ベッドから抜け出て、とりあえずで私の布団を肩にかけた。
それでもやっぱり至さんは起きなかった。
朝食の準備もあるし、もうそろそろ行かないと。
「至さん、ごめんなさい」
そっと声をかける。
もしも、お仕事に行くくらいの時間まで起きて来なかったら、起こしにきます。
と思いつつ、いつも起きてくるくらいの時間に目覚ましをセットしなおして、至さんのそばに置いた後部屋を出た。
寝静まった寮は、ひっそりと暗い。
それから少し寒かった。