第15章 一葉
そんな表情を一瞬したくせに、次の瞬間には笑顔を作って
「オレッちもアイス食いたいから、早く稽古終わらせてくるっす!
じゃあ、2人ともまた後でっ」
走って稽古場の方に行っちゃったから。
引き止めれば良かった。
それがきっと、その時なら出来たはずなのに。
「メイメイ?」
「太一君大丈夫かな」
「んー?あー、稽古自体は半からって言ってたからまだ大丈夫じゃない?」
「そっか」
「それより、メイメイゲネの準備についてなんだけど、この後大丈夫そ?」
「うん、すぐ行くね」
ーーーー
ーー
秋組のメンバーは、春夏に比べてもすんなりとチケットだって捌けたし、稽古だって万里くんと十座くんの喧嘩さえ除けばすんなり言ってたと思う。
犯行予告だって、きっと誰かの悪戯って…
思いたかったの。
だから、…。
「以上、ミーティング終わりっと」
談話室で話す秋組の声やその他のメンバーの声を聞きながら、明日の差し入れの準備をしたりして、
「明日のために、今日は早めにゆっくり休んでね」
「っす」
「へーい」
真剣に返事をする十座くんと、適当に返事をする万里くんをみて少しクスッとして。
「じゃ、俺っち、先に寝よっと」
「もう寝んのかよ。早ぇな」
「今日の通し稽古で、ちょっと疲れちゃったからさ」
「‥‥ちゃんと休めよ」
太一くんと左京さんのやりとりが、親子みたいだななんて思って。
ほんと。
…いつも通りだったのに。
「芽李さん、手伝うよ」
「臣くん、ありがとう。でも今日くらいいいよ、休んで?」
「俺たちの差し入れだろ、手伝いたいんだ」
「…わかったよ、ありがとう。って、臣くんソレ」
「ーーあ、これ持ってきちまってた」
臣くんがつけてたアクセサリーを外す。
「衣装のアクセサリー?
なくすと大変だから、私もどしてくるよ」
たまたま会話を聞いてたらいづみちゃんが名乗り出てくれた。
「私行こうか?」
手を拭きながら言うと、
「大丈夫。美味しいカレーの差し入れ作ってあげて」
いづみちゃんはニヤッと笑った。
「カレーは、いづみちゃんが好きなやつ」
「ふふふ」
「悪い、頼む」