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3月9日  【A3】

第13章 ※不断桜


 「なんの引き合わせかわかんねぇけど、

 秋組のオーディションの日、

 アイツを今度こそ打ち負かしてやろーって思ってついってったら、MANKAIカンパニーの劇場でよ。

 様子見ようとしたら強引なテンパにひきづられてさ、気づいたらオーディション受けてた」

 ボソボソ、っと話す彼に耳を傾ける。

 「入った後に知った。芽李さんが、あの劇団に居たこと」
 「言ってなかったっけ」
 「あぁ。…あと、咲也からも聞いた。色々…けどさ、出来るんだよオレは。頑張らなくても、ヨユーで、出来んだよ。何でも」
 「万里くん?」
 「できるってわかったから、…兵頭にも勝てたから、やっても意味ないだろ?」

 万里くんはしれっと言ったけど、そんな表情してるくせに嘘ばっか。

 「…じゃあ、万里くんと私の帰る場所は、晴れて同じになった訳だ?」
 「だから、やめたっつってんだろ?」
 「そんなの却下。第一、私万里くんの演技みてないもん。秋組のみんなに会ってないもん。万里くんを交えて、一回ちゃんとメンバー見たいもん。私が見るまで却下。見てもやめるの許さない」
 「…無茶苦茶な」

 ぐいっと、荷物で塞がる手を引っ張る。

 「帰ろ、万里くん。私と一緒に、怒られて」
 「…くそ、だりぃ」
 「わかった!じゃあ帰りながらプレゼンしてあげる!」
 「何のだよ、」
 「MANKAIカンパニーの魅力についてだよ」
 「強引だな」

 万里くんこそ、素直じゃない。
 …なんて、口に出しはしないけど。

 「亀吉からいく?」
 「そっから?!」

 行こうとしていた反対方向、つまり寮までの道の方に引き返す。

 「そっちじゃねーよ、」
 「え?だってこっちから来たよね?」
 「あっちの方が大通りだから、芽李さん連れて歩くなら確実。行くぞ」

 なんか、馬鹿にされたような気もしなくもないが…
 まぁいっか。

 「そういえば、秋組のリーダーはもう決まった?」
 「オレだけど?」
 「え?まじめに?」
 「マジ」

 少し誇らしげに言った彼。

 そういえば、どうしてやめようって思ったんだろう。
 その、兵頭くん?に勝てたからって、本当にそれだけなのかな。

 「待って、万里くん!」

 背中から聞こえた声に、2人して振り向く。

 「……監督ちゃん」
 「いづみちゃん」
 
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