第13章 ※不断桜
「なんの引き合わせかわかんねぇけど、
秋組のオーディションの日、
アイツを今度こそ打ち負かしてやろーって思ってついってったら、MANKAIカンパニーの劇場でよ。
様子見ようとしたら強引なテンパにひきづられてさ、気づいたらオーディション受けてた」
ボソボソ、っと話す彼に耳を傾ける。
「入った後に知った。芽李さんが、あの劇団に居たこと」
「言ってなかったっけ」
「あぁ。…あと、咲也からも聞いた。色々…けどさ、出来るんだよオレは。頑張らなくても、ヨユーで、出来んだよ。何でも」
「万里くん?」
「できるってわかったから、…兵頭にも勝てたから、やっても意味ないだろ?」
万里くんはしれっと言ったけど、そんな表情してるくせに嘘ばっか。
「…じゃあ、万里くんと私の帰る場所は、晴れて同じになった訳だ?」
「だから、やめたっつってんだろ?」
「そんなの却下。第一、私万里くんの演技みてないもん。秋組のみんなに会ってないもん。万里くんを交えて、一回ちゃんとメンバー見たいもん。私が見るまで却下。見てもやめるの許さない」
「…無茶苦茶な」
ぐいっと、荷物で塞がる手を引っ張る。
「帰ろ、万里くん。私と一緒に、怒られて」
「…くそ、だりぃ」
「わかった!じゃあ帰りながらプレゼンしてあげる!」
「何のだよ、」
「MANKAIカンパニーの魅力についてだよ」
「強引だな」
万里くんこそ、素直じゃない。
…なんて、口に出しはしないけど。
「亀吉からいく?」
「そっから?!」
行こうとしていた反対方向、つまり寮までの道の方に引き返す。
「そっちじゃねーよ、」
「え?だってこっちから来たよね?」
「あっちの方が大通りだから、芽李さん連れて歩くなら確実。行くぞ」
なんか、馬鹿にされたような気もしなくもないが…
まぁいっか。
「そういえば、秋組のリーダーはもう決まった?」
「オレだけど?」
「え?まじめに?」
「マジ」
少し誇らしげに言った彼。
そういえば、どうしてやめようって思ったんだろう。
その、兵頭くん?に勝てたからって、本当にそれだけなのかな。
「待って、万里くん!」
背中から聞こえた声に、2人して振り向く。
「……監督ちゃん」
「いづみちゃん」