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3月9日  【A3】

第11章 染井吉野


 「これが現実ってことでしょ。だから、アイツも…」
 「現実かもしれないけど、でも、幸くんのフォローとかちゃんと良かったよ。練習、したからでしょ。
 今日が千秋楽じゃないよ、ゲネなんだからこれから何公演もあるんだから、いくらでも挽回できるよ」
 「そんな簡単に言わないでよ!」

 幸くんを俯かせてしまった。

 「簡単に、…言わないで」
 「簡単に、言ってない。
 信じてるからいってる。みんなの練習見てきたから言ってる。
 確信してる。
 だって、みんなが言ってたんだよ!夏組最高って!」
 「…」
 「確かに、天馬くん今日調子悪かったかもしれない。
 天馬くんがもし今日のことで俯いてるなら、諦めてしまうかもって思ったなら、みんなが照らしてあげてよ。
 太陽みたいなみんなが、板の上で。
 私には絶対できないことだから、無責任なこと言ってるってわかってる。」

 俯きながら、みんな何思ってる?

 「でも、まぁ天馬くんは諦めてないと思うけどね」
 「え?」
 「今日の失敗で、諦めるほど天馬くんの意志は弱くないよ。ここで折れるなら、みんなの仲間になんて絶対なってない。
 今までの天馬くんとみんなを見てたらわかるよ。ここぞって時にちゃんと踏ん張れるリーダーだから、みんなついていこうって思ったんじゃないの?」

 ハッと顔をあげた、夏組のみんなの顔をみたら、もう大丈夫って思った。

 誰かともなく、それぞれ立ち上がり走り出していく。

 「…若いね」

 ボソッと呟くと、ポンッと肩に手が乗る。

 「説教じみちゃった、へへ」
 「よかったんじゃないっすか?」
 「暑苦しい」
 「ま、芽李らしくていいんじゃないの?」
 「カッコよかったヨ」
 「夏組の初日、楽しみになりましたね!」

 夏だけじゃない、春のみんなも最高だ。
 …MANKAIカンパニーが、最高なんだ。

 「やっぱり、大好きだなぁ」
 「芽李さんらしいっすね。」
 「ついに、俺を夫にする気が出てきた?」
 「イタル、抜け駆けよくないヨ。ツヅル、逮捕ネ」
 「俺は監督の夫になりたい」
 「え?真澄くん!?」

 監督を今更ながらに追っていく真澄くんと、それについてく咲。

 稽古をしていたという夏組のみんなが戻ってきたのは、それから何時間かしてからだった。
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