第9章 雛菊桜
「芽李さん?大丈夫ですか?」
寄り添ってくれる椋くんにとりあえず尊さを伝える。
「ビデオ回しとけばよかった…っ、夏組のメイキングに入れたらみんな泣くよ、いまのは!
やば、こんな瞬間に立ち会えるなんて、…うぅ、」
幸くんの冷たい目が私を捉えて、ため息までつかれた。
「おーげさすぎ。」
「メイメイオレらのこと好きすぎっしょ〜」
「めいはまんかいかんぱに〜大好きだもんね。おれもすき〜」
好き………くぅ!
「三角くん…まってて、今ピザ三角に切ってくるから!!」
ちょうどチンッとレンジが止まる音がする。
「いい匂いだな。」
「休憩しよっか〜!」
「じゃあ、お前ら明日もよろしくな」
「はいはい」
焼きたてのピザ、うまくいってよかった。
「はい、みんな稽古お疲れ様。打ち合わせ邪魔してごめんね、興奮しちゃったよ、衣装もとっても似合ってた。
他のみんなの衣装もとっても楽しみ。
サイトもすっごくよかった!!ワクワクする!
何でも協力するから、いつでも言ってね。」
「フッ、当然。」
みんなを見てたら、ふと湧き上がった気持ち。
カンパニーのみんなが大好きになってきたからこそ、自分の力のなさと何もしてあげられてないそんな感情が膨らんでく。
きっと、そう思うのは毎公演重ねるごとに増えてくんだろうと思う。
…だって、所詮私は役者じゃないから。
だけどまだ、みんなと向き合うことを諦めたくないって、みんなが頑張る姿を見て強く感じる。
「芽李さんも一緒に、ピザ食べます?」
「ううん。春組のみんなも勉強とか頑張ってるみたいだから、それとこのピザ至さんのリクエストだからみんなにも差し入れてくる。」
「そうですか、わかりましたっ」
可愛い椋くんに可愛い笑顔を向けられて、はい可愛いと可愛いしか言えなくなりつつ、ドアを閉めたあとで…
「インチキエリートと芽李さん、仲良いよね。」
「2人とも絵になりますよねぇ」
「…ふん」
「ゆきもめいすきなの〜?」
「え?」
「はは〜ん、ゆっきーやきもち?」
「別に、っていうかピザさめるよ。何止まってんの、ポンコツ役者。」
なんて会話が繰り広げられてたなんて、つゆと知らず…。