第7章 豆桜
ー…!!
いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
見慣れない天井と散らかった部屋。
ベットの上から静かに寝息が聞こえて、そういえば至さんの部屋だったと気づいた。
空は少し明るくなってきたけど、まだまだ暗い。
真っ暗な画面と体にかけてある毛布。
至さんの匂いがする。
今更部屋に戻るのも覚醒しない頭では面倒に感じられて、もう少しだけと毛布に潜れば、またあっという間に夢に落ちた。
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ーーーー
ーー…
どんどんっ
どんどんっ
「…くださ…さんっ……んですっ」
次に目を覚ましたのは、ドアの叩く音と焦る声が聞こえた時。
ギシギシと木の軋む音、ゆらゆらと感じる気配。
まだ眠っていたいのに、モゾモゾと毛布から顔を覗かせればカーテンの隙間から光が溢れてる。
「芽李さん!?なんで至さんの部屋にいるんですか?!」
綴君の大きな声。
そんなに叫ばなくてもいいのに…
「攫っちゃった」
モゾモゾと毛布を背負いながら声の方に行く。
「攫われちゃった」
きちんと覚醒しないまま至さんのボケにのれば、割と強めの力で頭をチャップされた。
「ふざけてないで、さっさと起きてください。心配したんっすからね!」
今度はムニッとほっぺをちぎられる。
「しゅみませう」
「次はないっすよ。全くいくら至さんが干物でも芽李さんは女の子でしょ。危機感もってください」
パッと離されたほっぺをさする。
取れるかと思った………。
「うっす、」
「早く着替えて2人とも来てくださいよ、朝食できてますから。
…カレーっすけど。」
うげ、朝からカレーか…
胃をさすりながら至さんが呟いて、私の毛布を剥ぎ取る。
「綴、芽李のことヨロ。
俺も支度したらすぐ行くね」
私の背中を軽く押して、外に出すとパタンとドアが閉まる。
「自由だな全く!
ほら、いきますよ。芽李さん。」
一度部屋に戻って着替え談話室に行くといつかの朝のようにみんなに迎えられ、せめて携帯電話は携帯しておけと怒られた。
用意されていたカレーにはナスとトマトが入っていて、もうすぐくる夏を彷彿させる。
「…美味しい」
素直に呟けば、いづみちゃんが満足げに笑った。