第5章 第四章君が好きだから
岡崎さんと懇意な関係であるならば簡単な方程式だ。
「まさか、あの伝説のプロデューサーって」
「はい?」
噂でしか耳にした事はない。
公の場にはほとんど姿を見せないが、斬新なプロデュースで新人だったRe:valeを僅か半年でトップアイドルにまで導いたと言われる天才プロデューサー。
デビューして二か月で全国のCMの90%をカバーした後に音楽雑誌Museの表紙を千に飾らせるだけではなく、モデルデビューをさせたとか。
百君に至ってはMCや司会者にバラエティーを専門に活動させる傍らで、ダンサーとしても売り出したと聞く。
「君があのプロデューサー?」
「伝説かどうかはわかりませんが…はい」
ありえない。
トップアイドルの育ての親が奏音さんだったなんて。
でもよく考えれば今までの功績は実績に基づいてという点では合点が行く。
デビュー前の彼等が歌うのは路上ライブだったが、人目に付きやすい場所を限定していたし。
会場も普通じゃ借りれない場所が多かった。
「何というか、当初は活動費用が無くて…ローカルなCMばかり取って来たんです。ギャラは野菜とかお米とかでしたけど」
「ローカル…」
「町おこし的な感じだったんですが、田舎は番組が少ないので一度流したCMの使い回しが多くて」
「それで、田舎の人は千と百君を覚えていたの?」
「はい、しかもその噂を聞きつけたのがMuseの編集長の方だったんです」
凄い偶然だ。
たまたまと言うけど、本当にたまたまとは思えない。
「その編集長は以前からMuseの読者の方が、素敵な男の子がいると手紙で寄せられていたんです」
読者からの手紙が殺到し、それで声がかかったということか。
すごいな。
「それで、Museの編集長の方より、アイドルコンテストに出てみないかと言われて、二人は初めての参加で優勝して、その後にダンスフェスティバルにも参加したんです」
「あのフェスに?」
真琴君達が参加したダンフェス。
だから奏音さんは詳しかったのか。
「トントン拍子に人気が出たのですが…その裏で色々厄介な事になりまして」
「厄介な事?」
そういえば、俺が社長に拾われて頃は既に小鳥遊芸能事務所にて手伝いをしていた気が。
まさか…
まさか!