第9章 Under the weather
喉が渇いて冷蔵庫を開けてみる。
スッカラカンの冷蔵庫にため息をついた。仕方が無いので水道の蛇口を捻る。
常温でぬるい、ただの水道水だったが最高に美味しく感じられた。
寝てれば治る、と三ツ谷くんには言ったものの昨晩早く寝すぎたせいで全く眠気が来ない。
ベッドに寝そべってはみたが無為に時間が過ぎていくだけだ。
少し悩んで、やりかけの課題を終わらせようとパソコンを開いた。
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外から大きめの排気音が聞こえて顔を上げた。
この辺りは繁華街からも幹線道路からも離れているからバイクが通ることは滅多にない。
ちらりと道路側のカーテンをめくると、ちょうどうちのアパートの駐輪場に入ってくるところだった。
あんなバイクに乗っている住民なんていただろうか。
いや、普段この時間に家にいないから知らないだけかもしれないし、どこかの部屋の来客かもしれない。
特に深く考えずに顔を引っ込めようとしたその時、バイクをとめた運転手がヘルメットを脱いだ。
ちらりと見えたその顔を思わず二度見する。
三ツ谷くんだ。
かっこいいバイクのハンドルに不似合いなスーパーのビニール袋。
彼はそれを軽々と持つとエントランスへ向かって歩き出す。