第6章 Slowly but surely
「これもいい!こっちもいい!どうしましょう三ツ谷先輩、私には選べません!!八戒くんならどれも似合うよー」
翌日、本当に三ツ谷くんはデザイン素案を5枚も持ってきてくれた。
さすが八戒くんと幼なじみだけあって彼に似合うデザインを分かっている。
いや八戒くんを抜きにしてもどれも素晴らしいデザインだ。
素案じゃなくてもうこれでいいよこれでいこう、と言ったらそれはさすがに褒めすぎ、と珍しい三ツ谷くんの照れ顔が見れた。
「ていうか先輩ってなに」
「もう先輩よ、なんなら先生でもいい!こんな素晴らしいデザイン一晩で描けるの信じられないもん」
「1日でっていうか元々ストックしてあったやつに手加えただけだからな」
「それでもすごいよー!ね、今度三ツ谷くんのデザインストック見せて!」
「おう、んじゃ今度家来るか?」
「え!?家!!?いいの!?」
「うるせー妹が2人いるけどな」
「いいなあ!私末っ子だから弟とか妹って憧れで…って、ごめん話脱線した。個人的にはこれかこれかなー」
机の上に並べた5枚のデザイン画の中から2枚を手に取る。
1つはスーツをベースにカッチリしつつも裾が流線の柔らかさのあるデザイン、もう1つはそれとは対称的に全体的にラフで歩く度に全身が靡くようなデザイン。
どちらも中性的でステージ上で映えそうなシルエットだ。