第5章 Find a model
「三ツ谷さん。私、大変なことに気づいてしまったんですけど。」
「はいどうしましたさん。」
ちょっとおどけてピシッと手を挙げてみた。
三ツ谷くんもノってきてくれてちょっと嬉しい。
「我々、モデルがいません!」
そう、ファッショショーの舞台に立つにはモデルがいる。そして製作の段階でモデルの目星をつけておかなければ寸法が出せない。
つまりせっかく素敵なデザインを出してもらっても製作には取り掛かれないというわけだ。
モデルに関しては学外でも可となってはいるのだが、事前の打ち合わせやフィッティングで何度か足を運んでもらわないといけないため新宿に無理なく来れる距離に住んでいることが望ましい。
私はこちらに知り合いがいないためこれに関しては完全に三ツ谷くん頼りになってしまう。
「あーそれな…。アテはある。一応。」
「え!?あるの!!?」
「ただ、その、さんが嫌な気分になるかもしれないんだけど、」
「いいよいいよ、気にしない!お願い声かけてみて!」
珍しく三ツ谷くんの歯切れが悪いのが少し気にはかかったが、もう藁にもすがる思いだ。
このままでは道行く人に片っ端から声をかけて回らなければならなくなってしまう。