第7章 TGIF!◉相澤消太
耳を劈くような、
いや、確実に劈く叫び声が家中に響き渡る
「ったく、朝から・・」
腰にタオルを巻きながら、彼女に耳栓を仕込んだ自分を褒めた
「ちょ・・っ!な、何でめぐが・・
オレん家に居るワケ!?!?!?!?」
「あ、山田くんおはよう・・、
えっと、その、ベッド、お借りしました・・」
昨日は楽しかったね、ぎこちない表情で手を振る彼女の前で山田が膝から崩れ落ちた
「おい、風呂空いたぞ」
「あ、ありがとう・・」
「え!?待って!?なんで!?
なんでオマエも居んのォォオ!?!?」
顔面蒼白の山田が震える手で口を押さえ
風呂上がりの俺を見上げる
「ダチに手ェ出した・・!?し、しかも三人で」
「っふふ!」
「相澤ァ!土下座するぞ土下座ァ!」
「勝手にやってろ」
テーブルに突っ伏して項垂れた山田に、困ったように笑った彼女が水の入ったグラスを勧める
「憶えてない方が、お互い好都合だよ」
「おい、妙な言い方はやめろ」
ごくりと水を飲み干した山田はグラスを置くと恐る恐る彼女に尋ねた
「で、オレと相澤、どっちがヨかった・・!?」
「相澤くん」
「お前ら、マジで殺すぞ」
笑いの止まらなくなった彼女が細い指先でその涙を拭う
今も昔もよく泣く奴だな、と溜息が零れた
「昔っから相澤派だよなめぐチャンは!」
「その二択では負けねェんだよ」
靴を履く俺の横で彼女が律儀に頭を下げる
この後二人でどこへ行こうか、なんて考えているのは俺だけかもしれないが
「素敵な金曜日をありがとう、お邪魔しました」
「目眩く夜の記憶が無いのが恨めしいぜ・・」
「ふふ、じゃあまた来るね」
昨晩の、儚く笑った顔が頭をよぎる
少しでも気を抜くと逃げられてしまいそうで
本気になったのはどっちだよ、心の中でそう悪態をつくと彼女を睨んで手を伸ばした
「二度と来させねェよ、」
頭を引き寄せ口付けると一瞬で紅く染まったその顔、同時に鞄の外ポケットに忍ばせた指が金属の輪を捕まえた
「俺の前では、余裕の無いその顔しとけ」
狼狽える彼女の腰を引き寄せ、ドアノブに掛けた手に力を込めて
「あの赤は無いだろ、中学生かよ」
趣味の悪いキーホルダーが照明に光る
呆然と固まる山田目掛け、俺はそれを背後に投げ捨てた