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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第7章 TGIF!◉相澤消太


薄暗い廊下、任務終わりの疲労と眠気を感じながらその理由を考える


帰って寝る予定だったろ、

今日だって何も言えない癖に、


案内された個室の前で靴を脱ぎ数分、襖に手を掛けたまま気配を消して


「だから例えばの話だってェの!」

「もう、山田くん飲み過ぎだよ」

部屋の中から漏れた彼女の笑い声に心が安らいでいくのを感じる
分かりきったその理由にまた気付かないふりをした


「で、付き合うならどっち!?」

「相澤くん」

「なんっで・・!今目の前に居るのオレ一人よ!?
 そこは一択だろ普通!」

個室でもダダ漏れの音量に顳顬を押さえる
その二択では負けねェだろ、上がりそうになる口元を意識的に下げて手に力を込めた


「めぐ!まさかまだ相澤の事好きなのォ!?」

「ちょ、山田くん黙って・・!」

音を立てて襖を横に引くと、山田の口を押さえようと身を乗り出した彼女と目が合う


「あ、おつかれさまでーす・・」

ぎこちない表情で手を振る彼女に笑いを堪え
山田の横に座った


「ご好意どうも」

「いや、違っ・・!」

絵に描いたように慌てるその姿を尻目にビールを注文すると、横にいる山田が口を尖らせてほざいた

「帰れよイレイザー、今日は絶っっ対に
 めぐをお持ち帰りするって決めてんの!」

「あ?お前が呼んだんだろうが」

山田の前には多くの空いたグラス、すでに出来上がっている理由はおそらくいつものアレだ

全く、手の掛かる・・


「オマエ呼ばないとめぐが帰るって言うから!」

「ちょっ、山田くん!それは言わない約束・・!」

昔っから相澤派だよなめぐチャンは!、
不機嫌に眉を寄せた山田が睨むと
気まずそうにした彼女はその紅い顔をメニューで隠した








学生時代に一度だけ、その想いを告げられたことがある

「返事は分かってるから、大丈夫」

これからも友達で居てね、
そう言った彼女はその言葉の通り、今も変わらず俺たちの側で笑っていて


卒業して数年、未だに俺は

何も言わないまま、言えないまま





「お前、今日ラジオだろ」

「今日は奇跡のオフ日!YEEEEAH!」

最っ高の金曜になるかはめぐ次第!、
馬鹿でかい声でそう言うと山田がまたジョッキを持ち上げて、彼女は昔のように楽しそうに笑った

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