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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第6章 言われなくてもそうするよ◉心操人使



「ヒーロー科への編入決まったんだね、おめでとう・・!!」


殺風景な部屋、
いつものようにベッドに腰掛けた私に、向かいの椅子に座った彼がブランケットを手渡した


「何十歩も出遅れた、やっとスタートラインだ」

彼らしい謙虚な言葉と、照れ臭そうに微笑んで下を向いたその顔に幸せが込み上げる

「早く、薬師に言いたくて」

「本当に本当におめでとう・・!!」


息を切らして共用スペースに現れた心操くんに腕を引かれ、連れられた先は彼の部屋
居合わせた友人たちの驚いた顔を思い出すと笑いが零れた

「ふふ、皆びっくりしてたね」

「イレイザーから連絡が来て、嬉しくてつい・・」

いつもなら絶対あんなことしないのに、そう言って彼は恥ずかしそうに頭を抱えた


「秘密にしてるのに、ごめん」

「ううん、一番に知らせてくれるなんて嬉しいよ」

言い訳は得意だから任せて、そう微笑んでブランケットを広げると彼の匂いが膝の上に広がる

寒がりな私のためにと部屋に置かれたそれは、いつだって特別に温かく感じた


「もしかして、勉強会だった、?」

心操くんの視線が私が抱えた教科書と筆箱に向けられる
明日の予習してただけだから大丈夫だよ、そう言って笑うと彼が机から同じ教科書を取り出した

「・・俺も一緒に予習しようかな」

「え、いいの、!?」

なんだか気を遣わせてごめんね、私がそう言うと彼は一瞬だけ眉を寄せた








「きっと寮も移っちゃうよね、寂しいなぁ・・」

教科書をぱらぱらとめくりながら思わず漏らした本音、目線を上げてこちらを見た彼に慌てて弁解する

「ご、ごめん‥!喜ぶべき事なのに!」

「いや、寂しいでしょ普通に」

できれば俺も寮は移りたくないよ、少しだけ赤くなったその耳に胸の音が速くなる
普段言葉数の少ない彼の気持ちを少し覗けた気がして、つられたように私の顔も熱くなった


「さっきの予習会だけどさ、いつもあのメンバーなの?」

「うん、最近はよく一緒に勉強してるよ」

「そうなんだ、知らなかった」

くるくるとペンを回した心操くんが、教科書をパタンと閉じるとそれをそっと机の上に置いて

まだ読み始めたばかりなのに、と私が首を傾げると彼は少し言いにくそうに言葉を発した

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