• テキストサイズ

《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第5章 口溶けに恋して◉山田END



眉間に皺を寄せたその顔が近付いて、唇が私に重なる
噛み付くように啄まれるキスは何度も何度も角度を変えて

「ん、んん・・っ!!!」

滑り込んだ舌が先程の指の感触を思い出させるように上顎をなぞると思わず跳ねた身体
山田くんが微かに笑う気配がして、また涙が込み上げた

「はぁ・・っ、」

「来年リベンジ?、させるかよ」

唇の触れる距離で囁かれたそれに身体がどうしようもなく熱を帯びて

「山、田くん」

「めぐにはオレみたいな、甘ーいのが
 似合うと思うぜ」

声を注ぎ込まれ、誘うように噛まれた耳が燃えるように熱い


「ん・・っ、や、はぁ・・」

緩く弧を描いた彼の唇が漏れた声ごと私を奪って
酸素を求めて開いた隙間すら埋めるように深く絡められるそれに頭が朦朧とする


「気持ちい?」

ぶんぶんと首を振ると山田くんが楽しそうに呟いた


「嘘つき」



一雫頬を伝った涙の跡にその唇が触れる


ついさっきまで
私は他の人を心から想っていたはずで

こんな風に流される隙なんて無いほど
その人に恋焦がれていたはずで



脳裏に焼き付いたのは
その人を想って作ったチョコレートと苦いキスの味


「どう、オレの事好きになってきた?」

失恋の悲しみでも山田くんへの怒りでもないその涙の理由はまだ自分でも分からないけれど

分かったとしても絶対に教えない


「なって、ない」

「強情だなァ」

そういうトコも好きよ?、そう意地悪に笑った山田くんの指が私の唇に触れる
ゆっくりと下唇をなぞり、とんとん、とその中心を叩いた


「開けるわけない、んだっけ?」

にやりと笑った彼が最後の一粒を私の口元へと運ぶ




その熱い視線に頭が痺れて


心ごと溶けてしまいそうで




「・・酔わせたの、山田くんでしょ」

そう言って薄く唇を開くと一瞬大きく見開かれた緑色の瞳


目の前の口角が上がると同時に舌に触れたその指に
私は甘く甘く、歯を立てたのだった


/ 98ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp