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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第5章 口溶けに恋して◉山田END



A組のドアを開けると、窓際の席に腰掛けた彼と目が合う
ずらされたヘッドホンから漏れた賑やかな音が部屋中に響き渡った


「めぐ!オレんトコ来てくれたの!?」

嬉しそうにその目を細め、前の座席を私に勧める


「山田くんの方が、
 ちゃんと味の感想くれそうだから」

ダメ出しはしなさそうだしね、そう付け加えると
彼が片方の眉を上げた


「何だよ、好かれてンのかと期待したっての」

ベタ褒めしながら食えばいいんだな?、ニィっと笑って差し出された彼の両手に私はそっと包みを置く


「ほー、これが本命チョコってヤツか!」

「たった今義理になったけどね」

「シヴィー!」

大きな声で笑いながら包みを開ける姿に
落ち込んでいた気持ちが一瞬だけ忘れられるような気がした


「それでは早速!」

仰々しくそう言った山田くんが箱の蓋を開けると
ふわりと漂った洋酒の香り


「何コレ、酒入ってんの?」

「他の女の子たちとの差別化を・・」

ちょっと背伸びしたくて数滴だけ入れたお酒
甘い物が苦手な彼のために、苦めのチョコレートを用意した


「酔わせる作戦か、やらしーなァ」

「そんなんじゃないよ!」

「渡す予定だったヤツも未成年よ?」

大人っぽい感じにしたかっただけ・・、
弁解する私を疑わしげな目で見つめた山田くんがそれを一つ手に取る


「俺は甘ーい方が好き」

「ダメ出しは受け付けないよ」

不貞腐れる私を横目に彼がそれを口へと運ぶ
ん〜まあまあ苦ぇな、なんて眉を寄せて
全然ベタ褒めなんてしてくれない


「結構入れた?」

「ううん、1、2滴だけだよ」

「すっげェ酒の味するぜ、食ってみ?」

そう言って摘んだそれを山田くんが私の口元へと運ぶ

何も考えずにそんな事をする彼とは違い
私はしっかりと恥ずかしくて、顔が熱くなっていくのがわかった


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