第23章 鳥かごは無色透明《前編》 ◉鷹見啓悟※
机上に広げられた書類の数々、保健室の懇談スペースで広げられたそれらを順に説明していく
ひと通りの疑問が解消されたのか、熱心にメモを取っていた女性が申し訳無さそうに頭を下げた
「お忙しいのに申し訳ありません、」
「いえ、引継ぎ無しの着任は大変ですよね!」
何でも聞いてください、立ち上がり紅茶の缶を手に取る
少しずつ薄暗くなってきた空、橙と青が混じるこの色が私はとても好きだ
雄英では備品の貸与や様々な手続き、教師陣では届かない範囲のサポート業務をクラス担当の事務員の方が担当してくれている
突然の担当変更に不安げだった彼女も少し落ち着いたようで、私はひと安心していた
「あの、変なこと、聞いてもいいですか・・?」
不躾に申し訳ありません、気まずそうに視線を落とした彼女がちらりとドアの方を一瞥する
どちらかと言えば男性の多い職場、ふわりと動いた綺麗な髪がとてもよく似合う彼女は、啓悟くんに贈られる大きな花束のように鮮やかに見えた
「・・偶然、見たんです、あの、今週の・・」
「あ、もしかして週刊誌ですか、!?」
物凄く気まずそうに視線を泳がせた彼女が次の言葉を思案している、もしかして彼女は、
先ほどの会議室での熱のこもった視線を思い出し、私は慌てて紅茶の缶を置いた
「違うんです!相澤先生とは、何も!!」
「そ、そうなんですか・・?」
「行事の買出しで撮られてしまっただけで、」
なのでご安心ください、ひと息に伝えるとほっとしたように下がったその眉
この女性はきっと、相澤先生のことを、
「変なことを聞いて申し訳ありませんでした・・」
「いえ全然!がんばって、くださいね」
「そ、ういうわけでは・・!」
消え入りそうなその声と赤くなった耳が急に愛しく感じられて、「頑張ってください」なんて飄々と言ってしまった自身の汚さに泣きそうになる
恥ずかしそうに落とされた視線、時折恋愛相談に訪れる女子生徒のような姿がいじらしくて、何度もお辞儀をして部屋を出た彼女が静かに閉めたドアを、私はぼうっと眺めた
「・・晩ご飯、食べたかな」
ふと目を遣ったデスクには書きかけの日誌、
なんだか今朝より殺風景に見えるそこに彩りが欲しくて、私は窓際に生けられた花々から赤い一輪を抜き取った