第23章 鳥かごは無色透明《前編》 ◉鷹見啓悟※
「あ、画面から消えんでくださいよ!」
テーブルに固定した小さな液晶、飲み物を片手にした啓悟くんの抗議の声が響く
果物を乗せたトレイをテーブルに置きソファに腰掛けると、彼は満足そうに焼鳥を頬張った
「で、何か変わったことは?」
「尋問されてるみたい」
「しますよそりゃ、昼間の電話覚えてます?」
酷かったですよホント、貴女のせいで午後の議題は全部却下してやりました、思わず小さく吹き出した私を画面越しに彼が睨む
「笑い事じゃなか、」
「ふふ、ごめんなさい、なんだかほっとして」
不機嫌に眉を顰めた啓悟くんが椅子に深く腰掛け息を吐く
隠せない疲労、今側にいられたらどんなにいいかとそっと画面に触れた
「そういえば、クラス担当の事務員さんが代わられてね」
素敵な女性なの、相澤先生の事が気になるみたい、
口の中に広がる瑞々しい甘さに思わず目を細めると、片眉をあげた彼が串でこちらを指した
「へー物好きすね」
「こら」
「どこがいいんだか」
私の反応を窺うようにじっとこちらを見つめた彼が頬杖をついて、急に居心地の悪くなった私はフォークを新たな黄色に刺す
「・・早く、会いたいです」
伸ばされた指先、啓悟くんが愛しそうに画面に触れる
剛翼さえあれば、切なく呟いた彼がテーブルに突伏して
「・・寂しか」
「うん」
「でも貴女は寂しいって言わん」
テーブルに顎を乗せたまま、恨めしそうにこちらを睨む目が私を捉えて、今まで無意識だったその理由を考える
「うーん、なんでかなぁ」
「・・明日は議題12件ですよ」
「ふふ!」
会いたい、寂しい、触れたい、
思っていないはずがない、こんなにも愛おしくて、大切で、でも、
「・・私が寂しいって言ったら」
啓悟くん、剛翼がなくても来ちゃうから、
自然にこぼれた答えがあまりにも自惚れていて、我に返った私は一気に頬が熱くなる
「ご、ごめん忘れて・・っ」
「通話全部録画してるんで」
「もう、そういうの辞めてってば・・!」
そげん思いよったんや、嬉しか、色付いた目元が幸せそうに下がって、録画に残りたくない私は熱くなった顔を両腕で隠す
恥ずかしさを紛らわそうと深く吸い込んだ柑橘の香り、思い出された酸味が耳の下をきゅうっと締め付けた