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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第23章 鳥かごは無色透明《前編》 ◉鷹見啓悟※



ちらりと目線を誌面に戻せば、困ったように笑う彼の腕に凭れかかる綺麗な人、それは本当に見慣れた光景のひとつで
カメラを遮ろうと翳された彼の手のひらがやけに大きく写っている

従来の人気はもちろん、ファンサービスが身体に染み付いている彼は道を歩けば必ず声を掛けられ、それに応える
時には腕を組み写真を撮り、女性ファンの声援に甘い笑顔で感謝を伝えるのだ




「・・俺、いつもこんな想いさせてるんですね」

今にも泣き出しそうな顔で引き寄せられた腕の中、どこかで割り切っていた筈の心がちょっぴり綻んでほんの少しだけ視界が滲んだ


「大人気ヒーローだもん、仕方ないよ」

「元、ね」

貴女にとっては違うでしょ、悔しさに似たものが浮かんだその眼、時折見せる未練は彼の口元を少しだけ歪ませる


「飛び回ってるとこ、観て欲しかったです」


「きっと大ファンになっちゃうね」

「させますよ、絶対」

苦しそうに眉を顰めた啓悟くんが腕に力を込める
ヒーローとして活躍する姿を近くで見て欲しかったと、事あるごとに彼はそう語る
まるでそのピースが欠けたままでは心許ないとでも言いたげに私をじっと見つめて



「飛ばなくても大好きなのに」

「はは、分かってはいるんですけどね」

一番格好いいとこ見せたいじゃないですか、バツが悪そうに逸らされた眼が愛しくて、私はぎゅっとその胸に顔を埋める

ヒーロー時代の動画観ます?、覗き込んだ啓悟くんがあまりにも真剣な顔で言うから、思わず笑いをこぼした私は彼の頬に口付けた


「・・動画、も観たい、けど」

「同感です、ベッド行きましょ」

遮るように重ねられた言葉が耳に届くよりも早く抱き上げられた身体、見つめた瞳の中に熱が揺れて私はじわりと顔が熱くなるのを感じる


「今日は手加減しませんよ、俺怒ってますから」

「え、啓悟くんの写真に比べれば全然・・っ」


「俺は全くの潔白ですが」

貴女はもう少し警戒すべきだ、怒りを滲ませた声が耳元で響くと背中に触れた冷たいシーツ、
ギシ、と音を立ててスプリングが軋んだ
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