第22章 あなたの青に触れさせて《後編》◉鷹見啓悟※
「あのー、話聞いてます?」
呆れた顔で覗き込んだ瞳、陽を浴びたそれが金色に光っている
最終日の午後、動悸を抑えながらもなんとか報告を終えた私の耳に彼の声が響いた
「えっ、と、ごめんなさい、今後の治療については」
「違う違う、一回落ち着きましょ」
都心の空気ってやっぱ悪いんすかね、心配そうに横に腰を下ろした彼が私をじっと見つめている
慣れない景色、晴れ渡る青空を鳥たちが気持ちよさそうに舞っている
最終日ということもあり長引いている滞在時間が少しずつ私の脈を乱していた
どうか悟られませんように、あと少しだけ、
「ちょっと気分転換しません?」
「え、?!わ・・っ」
軽々と抱き上げられるとまた上がった視界、思わずぎゅっと目を瞑る
「特別な場所があるんです」
そう言った彼が壁際の扉に手を掛けると一瞬で思い切り開いた視界、吹き込んだ強い風に恐怖が身体を這って、息が上手くできなくなる
「ご、ごめんなさい、あの・・っ、」
「行き詰まったときは此処で風に当たって」
貴女に迫った日も此処で頭冷やしたんすよ、照れ臭そうに笑った彼の輪郭がぼやけて美しい青に混じる
「貴女を抱いて、飛んでみたかったです」
気持ちいいでしょ、幸せそうに笑う横顔を曇らせたくなくて私は浅い息を吐いた
「ちなみにさっきの話、」
私を抱く腕に力が籠るのを感じる、隠れたその不安に寄り添いたいのに、貴方のことを愛しく想い始めていると伝えたいのに
しがみついていた筈の自分の両手から力が抜けていくのが恨めしい
「めぐ、って呼んでもいいですか」
って聞いたんです、あと今晩一緒に過ごしたいしちゃーんと付き合いたい、もう雄英に帰したくない、ってね
苦しげに顰められた眉、彼の甘い息遣いが髪に触れた
「嘘です、一個目以外は今初めて言いました」
あ、もしかして引きました?、少しだけ慌てたような色を滲ませたその声が愛しくて哀しくて涙が出そうになる
「、めぐ?」
手足の感覚がなくなっていく
酸素が、血が、
「・・っ、めぐ、おい、!」
住む世界が違うのだろうか、
ゆっくりと暗くなっていく視界の中、何度も紡がれる自分の名前を聞きながらぼんやりとそんな事を考えていた