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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第21章 あなたの青に触れさせて《前編》◉鷹見啓悟



ひっそりとした住宅街、これでもかと速度を落としてもナビの目的地が目前に迫る
速すぎず安全運転でしたね、なんてまた可愛い事を言った彼女がカチャリとシートベルトを外した



「えーと、気づいてるかもしれませんけど」

「はい?」


「会いに行ってるんです、貴女に」

月に一度しかないチャンスなんで、お土産だのなんだのって口実作りに必死です
運転中ずっと温めていた言葉をカラカラになった口から無理矢理に絞り出す



「今日逃すとまた来月までおあずけなんで」

ここまでは今日言うって決めてました、一気に吐き出して視線を左側へ向けるとこれ以上無いくらいに大きく開かれたその目が動揺に揺れていた


「あーその顔は全く気付いてなかったパターン?」

「、は、い、、」

「いや全然いいです、こっからなんで」

そう言って強気に笑って見せると、ほんの少しだけ安心したように息を吐いた彼女が黒いシートに視線を落とす
ドアを開けて走り去られなかっただけマシだ、そう何とか自身を励ました



「ごめんなさい、考えたこともなくて、その」

「うわ、もう振ろうとしてます?」


「びっ、くりして、いて、、」


だ、だってホークスです、よ、住む世界が、違いますし、私なんて、そんなの全然想像できないに決まってます、そんな風にもごもごと口籠る彼女の耳がじわりと紅く染まって車内の空気が濃くなっていく


完全な脈ナシってわけでもなさそうだ、それだけで天にも昇るような気持ちになって、気を緩めるとその頬に触れてしまいそうになる


「それっていつの話してます?」

「いつ、って」

「俺もうヒーローじゃないんで」

騒いでくれてた雛鳥ちゃんたち、皆ショートに取られちゃいましたよ、ぱたぱたと戯けて手を動かすと彼女の口から漏れ出た笑い声、それを聞いた俺はひどく安心する



「手始めに、呼び方から変えましょ」

ホークス辞めません?、下から覗き込むとすぐに逸らされた視線、来月までなんて到底待てないと確信した己を俯瞰する



「じゃあ、た、鷹見会長」

「ありえんでしょソレ」

態とらしく睨みつければ彼女はまた小さく笑って、一瞬も聞き逃したくないその声を通り掛かったエンジン音が掻き消していく

やっぱり地上は邪魔が多い、そう心で独りごちて去っていく二輪車をフロントガラス越しに睨み付けた
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