第21章 あなたの青に触れさせて《前編》◉鷹見啓悟
「薬師さんもここの卒業生でしたっけ」
「はい、普通科ですけどね」
いいですね、そう呟きながら一度くらい見てみたかった制服姿にぼんやりと想いを馳せる
昼間にすれ違った男子生徒を自身に重ねてみるが、学校という未知の世界に溶け込む己が想像できなくて考えるのを辞めた
花の香りのする紅茶が喉をじわりと温めていく、俺みたいな奴に好かれるのは迷惑かもしれないな
血濡れた指先が彼女の場所を汚してしまうような気がして俺はカップをテーブルに置いた
「お口に合いませんでした、?」
「まさかまさか!飲むのが勿体無くて」
「ふふ、沢山飲んでくださいね、おかわりもあります」
リラックスや安眠に効くハーブも入っていますから、そう言って彼女がカップを愛らしい口元へ運ぶ
「何ていうか、優しい味っすね」
「あ、その言い方は好きじゃないやつだ」
「いや好き、めちゃくちゃ好き」
死ぬほど好きです貴女の事が、伝わるように熱を乗せ送っている筈の視線が気持ち良いくらいに届かない
「じゃあ、おかわりしてくださいね」
揶揄うように彼女が微笑んで、俺はカップに手を掛ける
一度飛び込んでしまったら
間違いなく俺は取り返しの付かないほど貴女に執着してしまうのだろう、温いはずの紅茶が喉を焼いていくように熱い
「薬師さんさえ良ければ、帰り車で送りますよ」
「え、?そんな、悪いです」
電車で帰れますから、気恥ずかしそうに落とされた視線が桃色の包装紙を捉えて
彼女の服と同じ淡い色に変わった空、窓越しに見つけた雲は昨日よりも少し早く流れている
いい風が吹いているのに残念だ、邪魔者の居ない二人だけの空に貴女を閉じ込めてしまいたかった
「・・本当は空の旅に連れ出したいんですが」
生憎もう、そう言ってちらりと背中を見遣った俺の手に温かなカップが乗せられている
優しい視線に真っ直ぐ見つめられると、身体の中がじんわりと温かくなって
「”速すぎる男”のドライブ、気になってきました」
やっぱりお言葉に甘えちゃっていいですか、
お茶目に微笑んだ彼女が白衣を脱ぐとまた香った甘い花、俺は自分の眉がへらりと下がるのを感じた