第20章 ポッピンサマークラッシュ◉三馬鹿
息を切らして追いついた商店街、気付いていないのは間違いなく彼女だけ、そりゃそうだ、この開けた一本道で男二人が姿を隠す方が難しい
めぐがこちらを向きそうになる度相澤が彼女の視線を引いて、楽しそうに微笑むその横顔に息が苦しくなる
「てか何で俺たち隠れてんだ?」
「着替え買うのに男3人は嫌だろ!女心的に!」
「なるほど!さすがひざし!」
朧の口を塞ぎ見遣った前方、肩を並べた二人が何やら店の前で足を止める
にこにこと店員に話した数秒後、御礼を述べた彼女が涼し気なそれを受け取った
「あれ?、相澤くんはいいの?」
「ん」
イエローから透明色へのグラデーション、しゅわしゅわと浮かんだ檸檬がストローに踊って
「あ゛ぁーー俺のレモン作戦が!!」
憐れなそれが朧の手の中でくしゃりと音を立てる
気まずそうにちらちらと相澤を見遣る彼女の視線、アイツが仕掛けた通りの一言が赤い唇を動かした
「えっと、良ければ・・一口飲む?」
すごく暑いし、まだ私飲んでないから、
恥ずかしそうに視線を落とした彼女が水滴に光るそれをアイツに差し出した
「薬師がいいなら」
ありがと、薄く笑った相澤がストローに口を付けるとそれはすぐに彼女へと手渡されて
両手で受け取っためぐがおろおろと視線を泳がせる
「飲まないのか」
飲みづらくなったなら謝るよ、1ミリの謝罪も浮かべていない意味ありげな相澤の表情に、オレの横で朧が頭を抱えた
「何だアレ!?あ゛ぁ俺まで惚れそう!!」
「もう、揶揄わないで・・っ」、赤い顔を顰めた彼女が鮮やかな色のストローをその口元へ運ぶと、アイツの視線がオレたちを一瞬捉えて
届きそうで届かない想いが、触れられそうで触れられないその唇が、
「の、飲んだよ!」
「・・んじゃ、もう一口貰おうかな」
驚きに目を見開いた彼女の唇が何かを言おうとぱくぱく動いて、堪えきれず吹き出した相澤が肩を震わせる
「ひざしィ・・俺もう心が折れそう」
バタンと大きな音を立てて朧が道端に倒れると、その音に彼女がこちらを振り返った
「えっ、白雲くん!?」
大丈夫!?、驚いためぐが朧に駆け寄るよりも早く、相澤はその手首を引き寄せて
既に甘さに濡れたそれを口へ運ぶと、彼女は逆上せたようにアイツを見上げた