第20章 ポッピンサマークラッシュ◉三馬鹿
「もちろんOK!ごゆっくりィ!」
そう返したのはオレだった
あんな顔されちゃあ、そう言うしかねェだろ!?
一頻りはしゃいだ後、喉の渇きを潤すべくコンビニへと歩みを進める
その気になれば手を繋げるこの距離に浮かれていたと言われれば、まァそうに違いない
「透けてる」
「へ!?う、うそ」
陽も徐々に傾く頃、彼女の後ろを歩いていた相澤が真顔で「水色」と呟くと、涙目の彼女がそりゃもう可愛いカオでオレたちを睨んだ
「これ羽織ってて」
店の中冷えるし、そう言いながら相澤がリュックから取り出したのは半袖のシャツ、自動ドアが開くとあまりの温度差に彼女が小さなくしゃみをした
「ありがとう、でも相澤くんの服が、」
アイス売り場へ直行した朧を横目に、オレは二人の会話に意識を集中させる
手を繋げる距離が何だって?んなモン繋がなければ全く意味ねェだろと自身に悪態をついた
「ごめん、着替え買ってきてもいいかな・・?」
少し歩けば商店街があるみたいなの、相澤くんが調べてくれてね、もごもごと恥ずかしそうに呟いた彼女の耳が赤く染まっていく
「そりゃもちろんOK!ごゆっくりィ!」
「ありがとう、すぐ戻るね!」
言うなり彼女はそそくさと自動ドアへと向かって
どんだけ食うんだと言いたくなる量のアイスを抱えた朧が振り向いた瞬間、相澤がちらりとオレを見た
“ ゆっくり してくる ”
声を出さず動いた口元が静かに上がって、オレは叫びそうになるのを何とか堪える
「あれ?めぐとショータは?」
「・・まんまとやられたぜ」
ガラス越しに外を見遣れば、アイツの上着を肩に掛けた彼女が遠ざかっていく
車道側を歩く相澤がこちらを見る気配がして、朧とオレは慌てて頭を引っ込めた
「いやでもほら、ショータって真面目だしさ!」
「・・香山さんとかにも全然靡かねェしな」
「そうそう、超ストイックだし」
「・・朧が行くより、マシだろ」
「「・・・・・」」
・・んなワケない!!!!
見事に揃ったオレたちの声が狭い店内に響く
「アイツが一番タチ悪ィだろ」、苛つきのままに呟いたオレの横で朧ががさごそと袋を鳴らして
「めぐが食べたがってたやつ、せっかくゲットしたのによー」
爽やかな檸檬の描かれた一本、口を尖らせた朧が乱暴にその封を開けた