第9章 未来から来た女 頼朝side
「こちらこそお招きありがとう
息災そうで安心したよ」
そういうと
側仕えの顔は呆れたような
目を俺に向けた
やがて男がいなくなると
「お前、顔に出すぎなんだよ」
『いたっ
ほっぺつねらないでください!』
(…コイツ柔けぇな
餅みたいだ)
「征夷大将軍様の側仕えだ
舐められるんじゃねぇぞ」
『そ、そう言われても
なんか居心地悪くて』
「まぁいいとは言えねぇな」
『こんな豪華なところ
初めて来ましたよ
それに…なんか皆さん
笑顔がぎこちないですね』
「………」
(初めて来た割には
感の良い奴だな)
『?』
黙ってある俺を不思議そうに
覗いてくる
「こういうもんだ
権力や血筋が絡んだ宴なんてな」
『そういえば
親族の宴なんですよね
さっきの人がそうなんですか?』
「そうだ」
『ならなんでそんな顔してるんですか?』
「は?」
(そんな顔?)
『すっごくつまらなさそうですよ
それどころか嫌そう……』
(──誰にも悟られたことは
なかったのに……)
気づけば本音を語っていた
「…俺は血筋はどうでもいい」
『はい?』
「そんなものがあるから
争いが生まれる」
武士の世に必要のないものは
切り捨てる