第6章 側仕え
「あやかしに襲われやすい体質?」
(どう説明したものか……)
『私にもわからなくて
幼い頃から殺されかけたり
追い回されたりしてたんです』
シャラッ
耳に髪をかけ
耳飾りを見せる
『これは私の祖母が
作ってくれた魔除けです
これをつけている時は
大体のあやかしはよってきませんが
強いあやかしは例外なんです』
「……なるほど」
(まぁ御所には玉藻もいるし
狐憑きの能力があれば
大丈夫だと思うけど)
『私はまだ狐憑きの能力を
使いこなせてないですし
かえって頼朝様を危険に晒して
しまうかもしれないですよ?』
「…まぁ大丈夫だろ」
(ええ!?)
『いや、だからですね…』
「襲われたらその時だ
狐憑きの能力を使えばいいだろ
もし使えなくても
お前くらい簡単に守れる」
『え、』
守る?
がたんっ
『わっ』
急な揺れに慣れていない
身体は傾き倒れかけたが
逞しい腕に引かれて
打ち付けられはしなかった
『ありがとうございます
……どうして』
支えられた腕に手を置いて
顔を上げると
手で顎を掬われた
「俺の命令は幕府の決定事項だ
──だからそばにいろよ
新任狐憑きの側仕え」
『っ』
気味悪がられると思った
なのにこの人突き放すどころか
そばに居ろなんて──
『変わってますね
頼朝様って……』
思わず笑ってしまった
その顔を見てへぇと呟いた頼朝
「──さっきの地顔も悪くなかったが
こっちも悪くねぇな」
ぼそりと小さく囁かれた言葉は
誰も聞いてはいなかった