第22章 手当て
与一さんや末春さん、鞍馬と
なんやかんやで退屈しない日々が過ぎ、
その数日後───
(今日はせっかく与一さんが本を貸して
くれたのに……)
いくら文字を追っても、ちっとも頭に
入ってこない。
今日は与一さんは内政の仕事をしており、
末春さんは部下の人と仕事に行き、
鞍馬は……いつの間にかいなかった。
(なんだか落ち着かないな)
は読んでいた本を閉じ、
そっとため息を吐く。
(今回の戦は近隣の国に手を貸すって
言ってたよね
この前の文もあったし、奥州からそう
遠くない居場所だし、そろそろ
戻ってきてもいい頃だけど……)
ぼんやりとそんなことを考えていると……
「おーい、」
(あっ、与一さんの声だ)
廊下の方からのんびりとした声をかけられた。
『はい!』
立ち上がり、襖を開ける。
「、義経様がまもなく到着だってよ」
『本当に!?』
「ほんと、ほんと」
(よかった……!無事だったんだな)
生きて帰ってきたことに、内心でほっとした。
「ってことで、一緒に出迎えに行くか」
『えっ
でも、私は遠慮した方がいいんじゃ…』
「なんで?」
与一さんが不思議そうに首を傾げる。
『何でも何も人質だし、立場的に
おかしい気がする』
(私と義経様は敵同士だから)
本来なら、心配することだって
許されることのない関係だ。
(家臣達だって、よく思わないだろうし…
少なくとも人目のあるところで会うのは
極力避けた方がいいよね)
自分に言い聞かせていると、与一さんから
まじまじと視線を向けられる。
「初めて会った時も思ったけど、
あんたって真面目だよなー
……ま、そういうところがいいんだろうけど」
『いいって、何が?』
「さあ、なんだろなー?」
質問を質問で返され、
首をひねっていると───
「と・に・か・く」
『わっ!?』
与一さんは私の腕を掴み、無理やり
立ち上がらせる。
「義経様の出迎えに行くぞ!」
『ちょっと、与一さん!?』
そのまま腕を引かれ、部屋から
引っ張りだされてしまった。