第21章 人質
『………ぬぅ』
「ありゃ、こうなった時は一回こーしてだな」
『へー!すごい!なおった』
思いの外丁寧に教えてくれる与一に
完全に心を許す
その傍で器用な末春は既に
ひとつ作品を作り上げていた。
「珍しく陶芸に興味のある人がいたから
与一も楽しそうだね」
「楽しそうで悪かったな
弁慶なんか悪気なく壊してくからなー」
『ええっ』
(でも確かにあの握力ならりんごどころか
ココナッツも潰せそう…)
一度掴まれた記憶ご蘇る。
(あの握力と威圧感で料理上手の世話焼きか…
ギャップすごいよね)
なんとか形になった器を見て満足し
であった。
すると与一さんが口を開いた。
「そういや、義経様から文が届いてたな」
(!)
作り終わった器を乾かすため並べていると
義経様の話題が出てきて思わずばっと
頭を上げた。
「もうすぐ平泉へ戻るってさ
せっかくだし、末春ももう少しいなさいな」
「まあ、そこまで急いでないし
別にいいけど」
(義経様、帰ってくるんだ)
思わずはにかみそうになった唇を
キュッと結ぶ。
義経様の顔を思い浮かべていると
スパンっと襖を開く音がした。
『何!?』
「与一、退屈だ。殺し合うぞ」
「なんでだよ」
『え、ほんとになんで?』
振り向くと殺気だった鞍馬が立っていた。
(退屈=殺し合いの意味が分からん…)
「義経も弁慶もおらん中、
この屋敷には弱者しかおらず相手にならん
よって与一、末春。お前達が相手になれ
光栄に思うがいい」
「待って待って、なんか自然と俺も
含まれてるけどやめてね?」
「おい!待て!ここで風の異能使うなよ!?」
「───遅い」
鞍馬が鉄扇を仰ぐとビュウッとか風が靡き、
畳を切り裂いた。
(このままじゃ器が危ないっ!)
『もう!狐憑きの力!!!』
手をかざし鞍馬の風を吸収した。
「───ほう?
なかなか楽しめそうだ。小娘、ついてこい」
『無理無理!いやだよ!?』
「ちょい待ちなさいって!鞍馬!」
その後まじで殺し合いの相手をされそうに
なったところ、末春さんが極上のお酒と
蜜柑を用意したことでなんとか丸く納まった
のであった。