第21章 人質
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「くそっ、なんて強さだ……!」
「一人で相手にするな!全員で行くぞ!」
「数で押しても同じこと
試してみればいい」
「「「うぉぉおっ」」」
「───遅い」
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馬を華麗に操り、一人、また一人と
斬り伏せていく義経様の姿は目に
焼き付いている。
(……圧倒的な強さだった)
義経様以上に一騎当千という言葉が
ふさわしい人はいないだろう。
(まるで戦の化身のようで……
命すら失うかもしれない苛烈な戦い方を
していた)
思い出しただけで、背筋に冷たいものが走る。
「───俺が恐ろしいか」
『どうして…そんなふうに聞くんですか?』
「………確かにそうだな。
なぜあなたの考えが気になるのだろう」
(っ、どういう意味……?)
互いに視線を合わせたまま、疑問が宙に浮く。
頭にこびりついている戦場での記憶……
あまりにも鮮烈な記憶を打ち消すには、
私は義経様のことを知らなすぎた
「……少し長居をしたようだ」
(あっ……)
『義経様!』
部屋を出ていこうとする義経様の背中に、
咄嗟に声をかける。
「なんだ」
義経様が振り返り、視線が絡み合った。
(何か言わなくちゃ………っ)
───無理をしないでください。
喉元まで出かかった言葉を、寸前のところで
呑み込んだ。
『いってらっしゃい』
「……ああ」
義経様は静かに頷いて…………
青空が広がる日に、兵を率いて戦に出立した。
その次の日───
『ん?』
(この香り……)
嗅いだ覚えのある香の匂いに首を傾げた。
『こっち……?』
その香りを辿っていくと───
「お?、なんかあったかい?」
(与一さんだ)
『あ、えーと…』
(どうしよう
嗅いだことのある匂い追いかけて
来ましたなんて言えない…)
それでもキョロキョロと見回し
柱から綺麗な着物がはみ出ていた。
『あ!!やっぱり!』
「───あちゃ、見つかっちゃったか」
「え、なになに、どーいうこと?」
『お祭りの日助けてくださったイケメンさん』
「いけめん?」
『あ、とにかく、あの時は
ありがとうございました!
でも、どうしてここに……』