第19章 陰陽師助手記録帳参
「これ以上俺の領内で
粗相を犯すつもりなら
金売吉次が相手をするよ?」
「かっ」
(金売吉次?)
男は青ざめて
覚えてろっと捨て台詞を残して
逃げていった
『あ、ありがとうございました
助かりました…』
ぺこりとお辞儀をすると
「いや?全然
まあこんなに可愛かったら
声をかけたくなる気持ちはわからなくも
ないけどね」
(目がぁ)
キラキラフェイスに
キラキラゼリフで
目がやられそうだ
「はい、これ」
『え?あ!』
手にころんと転がった
狐の木彫り
(い、いつの間に…というか!)
『お金っ、』
「いいよ
ここ俺が仕切ってる店だからね
タダであげる
お守り代わりに」
『お守り?』
「今日はこれ以上男がよって来ないように
お祭り楽しんで
また会ったら今度は俺と逢瀬に行こうね」
ひらひらと手を振って
行ってしまった
『イケメンだな』
お礼も言い損ねてしまった
また会った時にお礼が出来たらいいなと
思いながら木彫りをじっと見つめたのだった
「あの子が狐憑きの子か
可愛い子じゃん
可哀想に
というかあの人どこいったんだ
ったく」
金売吉次という男は
頭を抱えながら
ある人を探すのだった
お祭りを楽しんでいたら
すっかり日もくれていた
(お団子、買ったはいいものの
どこで食べよう…)
人混みを避けて歩いているうちに
いつの間にか神社の裏手に
たどり着いていた
(せっかくだしここで食べちゃお)
人通りが無さすぎて
少し怖さもあったが
疲れた足を休めるには
十分だった為は
腰を下ろした
「おいおい、姉ちゃん
1人かよ?」
「せっかくの祭りだってのに
1人じゃ寂しいだろ?
俺らが一緒に遊んでやるよ」
(吉次さん、お守り効きませんでした…)
不意に暗がりから
荒っぽい声をかけられ
数人の男たちに囲まれてしまった
(こんなモテ期いらないんだけど)