第17章 陰陽師助手記録帳壱
【……憎い
……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い】
この世の恨みヲタどす黒く
煮詰めたように
女性の顔は歪んでいた
(息、できない………
怖い)
あやかしは多少なり慣れているが
”幽霊”は専門外だ
(あやかしの気配はするのに、
この女性何かおかしい……?)
身体がすくみ、思考が凍りつく
これほどに邪気にまみれた
幽霊に会ったことは無い
【ゆるさ……ない──】
女性の身体が蜃気楼のように揺らぐ
次の瞬間、の目の前に
青ざめたかおが迫った
『っい、いや……』
【ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!】
鋭く尖った爪で頬を
引っかかれそうになって──
「待ってよ」
【ぎゃっ………】
泰親さんが指を鳴らすと
の目の前に見えない壁が
できたかのように
女性が弾き飛ばされた
(これって、泰親さんの陰陽術!)
「俺を素通りするなんて酷いなあ」
白い呪符が指先に翻り、
遠くの床に倒れ込んだ
女性の透けた手足を引きった
「簡易的な拘束術だよ
ちょっと大人しくしてて」
【やめろ……放せぇ!!】
「…………」
平然と女性の顔を凝視した泰親さんが
不意に眉を寄せる
(っどうしたんだろう
って、余計なこと考えずに
ちゃんと狐憑きの力を使わないと…)
かすかに残る恐怖心を振り払い、
震える足を踏みしめ
何とか異能を引き出そうと
集中するけれど──
「──ああ
さんも、ちょっと待って」
(え?)
泰親さんが静かに私を振り返った