第16章 京
『泰親さ……』
かたんと椅子から立ち上がると
机にきらりと光るものが
『なにこれ?』
私のじゃない
としたら顕仁さんのもの?
(ど、どうしよ
もういないかな!?)
慌てて茶屋から出ると
やはりもう姿はどこにもない
(また今度って言ってたし
会えるかもしれないけど)
いかにも高級そうな
耳飾りを見ていると
泰親さんがやってきた
「ごめんねえ
来て早々はぐれちゃって
怖い思いしなかった?」
『大丈夫です
さっきまで一緒についててくれた人が
いたので』
(一旦預かっておこうかな
あ、でもお店の人に預けるべき?)
うーん、と悩んでいると
「それは君が持っていた方がいい」
『──え?どうして』
「何となくそう思うだけ」
猫のように目を細めて笑う泰親さんは
いつも通り
(──顕仁さんがわざと置いていった?)
理由は分からないが
そんなに抜けている人には見えなかったし
おそらくあっている
(またね、か)
顕仁さんの笑顔を思い浮かべると
どこか儚く生気がなかった
(また会った時に聞こう)
「さて、今日は身体を休めて
明日あやかし退治に行こうね!」
『はい、よろしくお願いします!』
(なんか生き生きしてるなこの人)
京都旅は始まったばかり