第12章 信念
1度聞いたら忘れられないほどの
不思議な質量を帯びた声が響き渡る
(一瞬で、空気が変わった)
急にあたりの温度が下がる
異質な空気感には覚えがある
────2度ほど『彼』に会った時だ
(ど、どうして)
この戦は義経様とは何も関係ない戦なのに!
草を踏みしめて近づいてくる足音が
やけにはっきりと聞こえてきて
心音がばくんばくんと音を立てる
(と、とにかく逃げた方がいいよね……!?)
硬直していた足を無理やり動かし
転がるように駆け出した
「動くな」
『──あっ』
腕を強く引き寄せられ、その場に膝を着いた
「思っていたよりも早い再会だ」
(厳密には再々会ですけどね!)
恐怖のあまり脳内はおかしな
つっこみを入れ始める
『────義経、様』
紫水晶に似た瞳が冷たく
を見下ろす
(あの時と──別人みたい)
あやかしから助けてくれた彼は
こんな瞳ではなかった
何故かそれが酷く悲しくて
顔を背けようとしたが
顎に添えられた手に阻まれてしまった