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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第14章 聲の向こう〈煉獄杏寿郎〉





「折り返しお電話ありがとうございます。只今担当にお繋ぎいたしますので、少々お待ちくださいませ」

「その件に関しては先日お伝えした内容で進めていただいて大丈夫です。それと別件で──…」

「大変申し訳ございません…。只今確認いたしますので、そのまま切らずにお待ち頂けますでしょうか…?」



今日も朝からオフィスにはひっきりなしに電話が鳴る。週明けは特に電話が多い。どのスタッフも内線を回したりと、忙しなくバタバタとオフィスを行き交っていた。


(今日は特によく鳴るな…)


杏寿郎も既に10本近くの電話を取っていた。手元の仕事が全く進まない。時計は間も無く10時になろうとしていた。


(11時の会議には、何がなんでも間に合わせなければ…)


杏寿郎はパソコンで作成していた会議用のプレゼンの仕上げに取り掛かった。



ピピピピ ピピピピ───…



杏寿郎の目の前のデスクの電話が鳴った。杏寿郎は時間を気にしつつその受話器を取った。

「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇、煉獄と申します」

『あっ私、いつもお世話になっております、株式会社△△の檜原かれんと申します。お忙しいところ、申し訳ありません。営業部の宇髄様はいらっしゃいますでしょうか…?』

「いえ、こちらこそいつもお世話になっております。宇髄ですね、宇髄は今…」

杏寿郎は奥にある会議室にいた天元を見つめ、目配せをする。会社用のスマホで誰かと話しているようだった。杏寿郎の視線に気付いた天元は、手を顔の前に持ってきて「ごめん」と詫びる仕草を見せた。

「…申し訳ありません。宇髄は今、他の電話対応をしており…。宜しければこちから折り返しを…」

『いえっ!全然!たまたま近くに来ていて!またお伺いしますので!』

「そうですか…」

ふと、杏寿郎は隣の席の天元のデスクにあったメモに目が留まる。


"来週のどっかで檜原さんからサンプルもらう!!"


(…!これは…!)

杏寿郎はそのメモを見ながら、かれんに話しを続けた。

「檜原様、宇髄が依頼をさせて頂いているサンプル…の件でしょうか?」

『え!あ、はい!そうなんです!煉獄様もご存知でいらっしゃったのですね!ありがとうございます!』

「いえ、もし私でよければ受け取りは可能なのですか…」

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