第13章 いま、この時だけは、〈煉獄杏寿郎〉
日に日に、夜の冷え込みが厳しくなる。かれんは首に巻いたネイビーブルーのマフラーに肩を竦め、駅の改札口へと向かう。
「いいマフラーをしているな」
そう声を掛けられ隣を見ると、そこには杏寿郎がいたのだ。
「…きょ、じゅろう、さん…?」
「久しぶりだな。かれん」
かれんの開いた口が塞がらない。何故、今どうしてここに杏寿郎がいるのか、かれんは見当もつかなかった。
「辞令が出て、日本での勤務になってな。…この後、もしよければ色々と話を、したいのだが。…今後の二人の、ことを」
「…っ!」
そして、杏寿郎はかれんの手を握り、あの初めて出会ったカフェに向かった。
話しても話しても、二人の話しは尽きなかった。
あの時の、出会った時の、ときめく気持ちが呼び起こされてゆく。
二人は店の閉店時間まで、今まで会えなかった時間を埋めるように、これからの未来に胸を弾ませていた。
おしまい 𓂃◌𓈒𓐍