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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第9章 その香りにときめいて - 幸せのほころび -〈不死川実弥〉




実弥も緊張して、しどろもどろになる。その顔も、そして耳までもが真っ赤に染まっていた。
かれんは、実弥からプロポーズをされたのだと、ようやく理解できた。今までに感じたことがないくらいにかれんの心臓は、ばくばくと打ち付ける。


「…こ、こんな私が…、実弥さんの、…奥さんになっても…いいの…?」


かれんは嬉しさが込み上げるも、夢のような出来事に思わず実弥に確認をしてしまう。


「当たり前ェだろーが。…俺ァ、かれんじゃなきゃ…困んだよ。これからも、…俺の傍にいてくれねぇか、かれん」


かれんの心が、実弥の熱い眼差しに射抜かれる。その透き通る瞳に誓うように、かれんはにっこりと微笑んだ。


「っはい!喜んで…っ!」


実弥が今にも泣きそうに微笑んだ。その表情にかれんの視界も潤む。実弥はかれんの赤く染まった頬に手を添え、やさしい口付けをした。二人の顔はゆっくりと離れると、そのままかれんの額に実弥はコツンと自分の額をくっつけた。


「実弥さん、こんなにもたくさんの幸せを…ありがとう」

「それはこっちの台詞だァ」

「ふふっ、夫婦になったら、通勤デートもお家デートも毎日できるねっ!」

「そうだなァ。これからは毎日一緒だ」


実弥はかれんを再び自分の腕の中に閉じ込めると、同じ香りが二人を祝福するかのようにふわりと包み込んだ。


それは幸福という言葉以上に幸福で、言葉にできないほどの倖せに二人の心は満ち溢れる。


かれんと実弥を繋いだ香水は、二人の掛け替えのない宝物になった。





新居のキャビネットのジュエリートレーに置かれた香水は、今では一つになった。二人は今日もお揃いの香りを纏い、手を繋いで家を出る。


大好きな人とずっと一緒にいられる幸せに、胸をときめかせながら─────






      その香りにときめいて






 おしまい 𓂃◌𓈒𓐍

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