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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第8章 花咲く夜に〈煉獄杏寿郎〉




「…かれんが好きだ。出会った時から、ずっと…かれんが好きだった」

杏寿郎の突然の告白に、かれんの心臓は今までにないほどにどきどきと胸を締め付けてくる。痛いくらいに鳴る鼓動なのに、不思議と苦しさは感じない。杏寿郎の鮮やかな緋色の瞳に見つめられ、かれんの目に溜まった涙がぽとりと枕に落ちた。

「…私も杏寿郎くんが大好き。…寝たままお返事してごめんね」

「いや、嬉しい返事を貰えて…俺は幸せだ」

杏寿郎は愛おしそうにかれんの頬を撫で、その涙を指先で拭ってくれた。

「かれんにハーブティーを持ってきた。喘息にはこれが効くと、母がよく弟に飲ませていた。…ハーブティーは飲めるか?」

「うん!嬉しい…!ありがとう」

杏寿郎はにっこりと笑うかれんの頭を撫で、ケトルで湯を沸かしハーブティーをいれてくれた。

二人でハーブティーを飲んでいると、杏寿郎は壁に掛かってる浴衣を見つめていた。

「…今日はこれを着ようとしていたのか?」

「そうなの。蜜璃ちゃんと買いに行って…。でも来年の花火大会は絶対に着るわ!」

「きっとかれんによく似合うだろうな。今から楽しみだ!」

嬉しそうにほころぶ杏寿郎の横顔に見惚れていると、突然外が眩しく光った。



ドドンッ!!



「「!?」」



思わずかれんと杏寿郎は顔を見合わせ、ベランダのカーテンを開けた。すると目の前のマンション合間から、大きな花火が上がっているのが見えた。

「…!すごい!ここからも見えるのね…!綺麗…!」

「これは見事だな!!」

「会場で見るのも楽しいけど…これはこれで、ありかもね!」

次々と打ち上がる華やかな花火を楽しそうに見つめるかれんを、杏寿郎は愛おしそうに見つめていた。

「…早速、叶ってしまったな」

「…ん?」

「かれんと…二人で花火を見たいという願いが」

杏寿郎はかれんを抱き寄せ、花火が放つ色とりどりの光に照らされるかれんの瞳を見つめたまま、その唇にそっと口付けを落とした。

「かれんが元気になったら、沢山出かけよう」

「うん…っ!」

二人は微笑み合うと、再び甘い口付けを交わした。


夏の夜空に咲く花火のように、二人の想いもそっと花開いた。





 おしまい 𓂃◌𓈒𓐍
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