第5章 ロータリーの歌姫〈煉獄杏寿郎〉
杏寿郎は突然のことすぎて、目の前の状況についていけない。どうして今ここにかれんがいるのか、分からなかった。
「…だって一年前の今日、ここで煉獄先生と出会ったんだよ」
「…!!」
「…私ばっかり片想いしてたのね」
「違う!!ずっと…すっとかれんのことを想っていた…っ。でももう俺とかれんとでは立場が違いすぎる。だからもう…」
「立場が違うから、なに?」
「…っ」
「私は、杏寿郎さんのこと…ずっと好きだったよ。…ずっと会いたかった」
「…かれん…っ!」
杏寿郎はかれんの腕を引き、強く抱きしめていた。かれんもそれに応えるように、杏寿郎の背中に手を回す。
「…何になろうと、どこに行こうと、私は私よ。これからは杏寿郎さんの傍にいさせて…?できたら、このまま…ずっと」
「ああ、勿論だ。俺もかれんの傍にいたい。これからもずっと、ずっと一緒だ」
「…杏寿郎さん、大好きよ」
「俺も、かれんが好きだ」
するとかれんは杏寿郎を抱きしめたまま、囁くようにその歌を小さく口ずさむ。
『 さくらいろの きみ
春の風に舞う
花びらの隙間から現れた きみ
真夜中の暗闇から
私を見つけてくれて ありがとう
私の名前を 愛おしそうに
何度も 呼んでくれて ありがとう
また 何度でも
巡り会えるように
私は この桜の木の下で
きみを 待つよ 』
おしまい 𓂃◌𓈒𓐍