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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第4章 夏の贈りもの〈煉獄杏寿郎〉




杏寿郎と夫婦になってから、二度目の夏が過ぎようとしていた。今日もじりじりと灼熱の太陽の日差しが、窓からリビングを鋭く照らしつける。


かれんと杏寿郎は駅から少し歩いたところにあるマンションで暮らしていた。
入籍後、不動産で新居を探していたところ(それまではお互い実家暮らしだった)、店員から新築マンションが建つと教えてもらったのだ。二人の仕事の最寄駅からちょうど半分の距離に建つとのことで、内覧会に参加して即決した物件だった。「ペットも飼えるらしいぞ!」と終始子供のようにはしゃぐ楽しそうな杏寿郎を見てかれんは、この人と結婚して良かったとその笑顔に心を和ませていた。

8階建の6階で、3LDKの南向きの角部屋。憧れの広々としたカウンターキッチン。ベランダからの景色は見晴らしも良く、南側と西側に2つあるので朝日も夕日も両方とも差し込み、家の中はいつも明るい日差しが降り注いでいた。

かれんも杏寿郎もこの家が大好きだった。もちろん二人で出かけることもあったが、週末はお気に入りのソファで映画を観たり、本を読んだりすることが多かった。最近はまり出した海外ドラマを一緒に観るのも二人の楽しみだった。菓子作りが大好きなかれんは様々な菓子を作った。その菓子に合わせて、コーヒー好きな杏寿郎は豆を挽き、美味しいコーヒーを淹れてくれた。杏寿郎はかれんが作るスイートポテトが大好きだった。

・・・

「…あ、雨だ…っ」

激しい雨音に気付いてかれんは外を眺めた。かれんは基本的にカレンダー通りの休みだったが、遅れた夏季休暇を取得し平日だったが家にいた。お盆も関係なく仕事があるので、教師をしている杏寿郎とは長期の休みがなかなか被らない。そのため旅行は頻繁に行けなかったが、家で一緒に過ごせるだけで二人は十分に倖せだった。

『今一部地域に夕立が発生し、大雨雷雨が──…』

テレビの天気予報が各地の夕立の状況を報道していた。

(杏寿郎、傘持ってたかな…)

かれんは杏寿郎に、傘持ってる?駅まで行こうか?とメールを送った。だが杏寿郎から返事は返ってこなかった。

(…忙しいのかな。今日は残業ないって言ってたのに…)

外からはゴロゴロと雷の音が鳴り始めていた。かれんは一気に暗くなる空模様を横目に、杏寿郎の連絡を待った。


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