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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第27章 二人の約束〈宇髄天元〉





「そういうことは、ちゃんと目ぇ見て言えよ」

「…っ!!」


かれんは天元にさらに見つめられ、息が詰まりそうになる。
開こうとする口元が小さく震えた。

かれんは深呼吸をすると、ぎゅっと目を閉じた。



「て、天元くんが、…ずっと前から、…大好き、です」



全身に響く心臓の音。

かれんは恐る恐る目を開いた。



「俺も」



一瞬、天元が何を言っているのか、かれんは分からなかった。

息が出来ない。

かれんの視界が涙で滲んだ。
ぽたぽたと大粒の涙が、かれんの手に落ちてゆく。


「!? ちょ、おい!んで泣くんだよ!?」

「…だ、だって、天元くん、人気ものだし…格好、いいし、他に好きなひと、いると、思ってたんだもん…っ」


ずびずびと子供のように泣くかれんの頭を、天元は無造作に撫でた。


「ばーか。…かれんしか見てねーよ、俺は」


天元が照れ臭そうに笑う。天元の大きなあたたかい掌は、かれんを包み込むようだった。


「ひどいよ、天元くん。髪の毛くしゃくしゃになっちゃったじゃん…」

「そうかぁ?前より断然派手でいーと思うけど」


にかにかと楽しそうにする天元を見て、そんな天元が好きだとかれんは思った。


「天元くん、ネクタイ結ぶのへたっぴね」

「はあ?こっちの方が派手でいーだろ?」

「全然だめ。校則違反」

「へいへい」


夕暮れの教室に響く二人の笑い声。

その日、下校時間ぎりぎりまで、二人の話は絶えなかった。









「天元くん!お弁当!忘れてる!」

「わりー!サンキュ!」

もう、とむくれるかれんは、天元に弁当を差し出した。

「そんじゃ、仕事終わったら連絡すっから」

「あっ、天元くんっ、ちょっと待って!」

「ん?」

かれんは天元の襟元のネクタイをきゅっと締めた。

「…これでよし!」

にっこり微笑むかれんに、天元の目元が下がった。


「さすが、俺の嫁だな!」


天元がくしゃりとかれんの頭を撫でる。


「ちょ、ちょっと!せっかくとかしたのにっ!」

「あ、わり〜!」


けたけたと嬉しそうに家を出る天元を、かれんは大きく手を降って見送った。






 おしまい 𓂃◌𓈒𓐍

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